殴り合う音と罵り合う言葉が耳に入った。


私はその様子を見て、後ろから仁王さんを止めた。


『もう…止めてくださいっ!!』

「美波…!!」


仁王さんは切原君を殴る手を止めた。


「やっぱり仁王先輩変わったんッスね。俺そんな先輩見たくなかったッス」

「俺は大切で守りたいものを見つけた…もう前の俺じゃないんじゃよ」


そう言い残し、仁王さんは私の手を引き切原君の家を後にした。


切原君のあの言葉…。
本当なのか聞きたかった。


けれども聞くことは出来ずに、時は流れた。


そして一軒の家の前で仁王さんが止まった。


『ここは…?』

「俺の家じゃ。そのままの格好で帰れないじゃろ?」

『あぁ…はい…なんかすみません…』

「いいんじゃよ」


仁王さんはにっこりと笑みを浮かべて頭を優しく撫でてくれた。


この後何をされるか今はまだ分からなかった私は、多少躊躇いながらも仁王さんの家へと足を踏み入れた。

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