再会



息を切らして顔を出したのは、監察方の山崎退。

「げ、副長、沖田隊長……」
「……さっさと襖を閉めやがれ、寒いだろうがっ!」
「す、すみません副長ォォっ!」
「まぁまぁ、トシ、そのへんにしておけ。……で、どうした?」

開け放たれた襖から部屋に入る冷気。
それが土方の怒りを買い、山崎は一発頭に拳骨を食らうが、近藤に止められ、その後きっちりと襖が閉められた。
近藤に促され、涙目になりながらも山崎は説明し始める。

「屯所の前にあの、局長のお客様がいらっしゃっているんですが……その、目付きの鋭い女性でして……あの、はい」
「あぁたぶんその人はとっつあんの知り合いだから……とりあえず通してあげて」
「近藤さん、いいのかよ?通したら帰せねぇだろ、そいつ」
「まぁ……とっつあんの決めたことだからな……。まぁなんとかなるだろう!」

困惑顔の土方に対して、近藤は前向きにガッハッハと笑う。相変わらず沖田はむすっとしているが、口は閉ざしたままだ。

「と、とにかく、お通ししますねっ!失礼しました!」
「あ、ごめんなさい。無理いって通してもらったから大丈夫だ」

山崎が部屋から出ていこうとすると、廊下から少し低めの声がかかった。

襖がすっと開き、綺麗に正座をした女性が現れる。その女性の姿にその場にいた全員が釘付けになってしまった。
椿の簪が揺れる艶やかな黒髪、薄桃色の色っぽい口唇、切れ長な瞳は紫水晶のように輝き、着物に視線を落としてみると、白地に紅梅の振り袖に紅の帯を締め、金の帯締めをしている。
そう、所謂美女がそこにいたのだ。

「……あ、あれ……真選組……だよな、ここ?私なんか間違えたのか?いや、違うよな、うん、たぶん合ってる……けど……なんでだ、なんで知ってる顔がいるんだおかしい」

その女はざっとそこにいる人の顔を見て、一瞬ぽかんとした後、一人でぶつぶつと百面相をし始める。

「テメェ、何者でィ。さっさと名乗らねぇとその首飛ぶぜィ?」

衝撃からいち早く立ち直った沖田が抜刀し、座った女の首元に刀を突き付ける。

「……総、しまいなさい」

女は全く動じずに沖田を見つめ、一言呟く。沖田は目を見開き、刀を下ろした。

「……っ!姉上の葬式にも来なかったくせに……っ!なんで今更……俺の前に現れやがったんでィ……玲姉っ!」

悔しそうに、苦しそうに、俯きながら沖田が叫ぶ。
女の名前は星原 玲。沖田ミツバの親友だった女性であった。

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