事の発端
「トシ、総悟。あの……だな」
ここは真選組の屯所内にある局長室。
副長の土方十四郎と一番隊隊長の沖田総悟の目の前に座るのは、珍しく深刻そうな顔つきの真選組局長、近藤勇であった。
「どうしやしたか、近藤さん。珍しく深刻そうじゃねーですかィ」
「そうなんだよ!きいてくれるか?きいてくれるよね!?」
「お、おぅ……」
歯切れの悪い近藤にしびれを切らしたのか沖田が口を開くと、近藤は身を乗り出して話始める。
「それがさぁ……松平のとっつあんが、なんだその、栗子ちゃんを助けた凄腕の薬師がいて、その子のために真選組に特別医療隊を作って、その子を配属するとか言い出してさぁ……」
「……はぁ?またとっつあんは……。まぁ怪我人も出るからいいんじゃねぇの」
「薬師なんてあてになりやせんぜ、わざわざ作るようなもんじゃねーと思いやすがねェ」
松平のとっつあんとは松平片栗虎、警察庁長官のことで、真選組の上司にあたる人物であり、はっきりいってやることが無茶苦茶である。
そんなとっつあんの発言によって、今まで何度振り回されたことかと呆れ顔の土方と、薬師に何かしら嫌な思い出があるのか、心底嫌そうな顔をする沖田。
そんな二人を眺めつつ、近藤はもう一つの爆弾を投下する。
「しかも、その子は女性らしくてなぁ……」
「女ぁ!?いやいや、ねーだろ、真選組は女人禁制だろ!?」
「土方さん、落ち着いてくだせェ。うるさくてかないやしないや。そんな女、虐めたおして出ていかせやしょう」
土方は猛反対し、沖田はドSの顔を見せるが、とっつあんが決めたことは覆せない。
「まぁ……とりあえず、今日顔を見せにくるらしいんだが」
「局長ぉーっ!」
近藤が苦笑いをしながら、話を続けると廊下をドタバタと走る音がして、襖が開け放たれる。
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