梅之華



「さて、じゃあいこっか」

星原は、するりと自然な仕草で沖田の手を取り、歩き出す。

「……っ」

沖田は不意に繋がれた手に少し戸惑うが、こちらを見て微笑む星原の視線に気づくと、俯いてぎゅっとその手を繋ぎ直した。

「総」
「なんですかィ」
「これ、どうしたらいいんだ……?」

気がつくと広間の前についており、星原が襖を開けて固まっていた。沖田が中を覗く。

「あー……いつものことでさァ」

どんちゃん騒ぎをしている隊士が半分、潰れている隊士が半分。中でもたちが悪いのは、一糸纏わぬ姿で躍り回っている近藤だ。

「……男って、どこにいってもこんなのなのか」

星原は呆れ顔でぼそりと呟くと、まだ酒瓶に酒が残っている席に座る。沖田もその隣にすとんっと腰を下ろした。

「玲姉、注ぎやす」
「あ、ありがとう」

沖田に注がれた日本酒を煽る星原。

「玲姉、結構呑む方ですかィ?」
「んーまぁ、強いからな」
「そうですかィ。……俺にもくだせェ」
「バカ。まだ未成年だろ、総」
「ガキ扱いしねぇでくだせェ。俺、結構呑みやすから」

ガンガン周りにある酒を煽る星原の頬は、少し赤みを帯びていく。その手から酒瓶を奪い、自分のグラスに注ぐとぐいっと飲み干す沖田。

「ちょ、呑むなよ。って、これ鬼嫁か」
「美味でさァ」

酒の銘柄を見て、驚く星原と、それを見ながら、くいっとまた煽る沖田。

「呑むなっていってんのに。鬼嫁は確かに旨いけど。私はこっちのが好きだ」

星原は隣の席にあった酒瓶をよいしょと持ってきて、先程とは違い、味わうように呑む。

「梅之華……ですかィ?」
「あぁ、柔らかい香りと優しい味で旨いんだ、これ」
「ちょっとだけ、くだせェ」

沖田が少しだけとねだると、星原はカランとグラスを鳴らし、微笑む。

「ん」

そういって差し出したのは彼女のグラス。

「……え、それですかィ?」
「うん、まだ入ってるし。呑みたいなら」
「……いただきやす」

沖田はグラスを受け取ることを少し戸惑ったが、興味が勝ったようで、受け取り、くいっと煽る。

「これは……美味しいでさァ」

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