和解
「ん……あ、布団……?」
沖田が目覚めると、自分の身体に布団が掛かっているのに驚いた。脱いだ記憶のない隊服の上着も、枕元に置いてある。
「玲姉か……」
ぐしゃぐしゃと頭を掻きながら起き上がると、身体のだるさがなくなっていることに気づく。
「ふぁぁ……」
沖田は欠伸をして、星原の部屋を出る。
外はもう日が暮れて紅い空が広がっていた。
「あ、起きた?総」
廊下の向こうから、星原が歩いてくる。何だか広間の方が騒がしい。
沖田は眠そうに目を擦り、少し怪訝な顔をした。
「私の歓迎会だって。別にそんなことしなくていいんだが……。何か理由つけて、宴会したかったんだろうな」
苦笑いしつつ、その前髪をくしゃりと掻き上げる星原。ほんのりと頬が紅色に染まっている。その仕草、表情が妙に色っぽくて、沖田はドキリと胸が高鳴るのを感じた。それを否定するようにふるふると頭を振る。
「で、まぁ酔い醒ましついでに総も呼びにきたってわけ」
星原はそんな沖田の気持ちも知らないで、優しくふわりと微笑む。それは大好きだった姉のミツバと重なる表情。
「……玲姉」
「ん?……え、なに」
「……ちょっと甘えさせてくだせェ」
沖田は突然するりと星原の背中に手を回して、彼女に身を任せる。その行動に星原は少し驚いた顔をしたが、すぐ沖田の意図を理解し、手を伸ばして、その柔らかい髪を撫でた。
「どうした?……というか、私のこと怒ってなかったか?」
星原は不思議そうに言う。彼女の髪に顔を埋めながら、呟くように答える沖田。
「……それは、事情が分かりやしたから、もういいでさァ。怒ってやせん。ただ」
スッと身を引き、視線を合わす。
「玲姉は、いなくならねェでくだせェ」
病弱だが優しく、すべてを包み込むようなミツバ、血は繋がっていないが、強く凛々しく優しい星原。
そのどちらもが沖田にとっては大切な人であることに変わりはない。その事を訴えるように、強く、しかし少し不安げに沖田は言った。
「ふふふ、私はそう簡単に死んだりしないよ?」
だから大丈夫だよそれはと笑いながら、星原はわしゃわしゃと沖田の髪を撫でた。
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