剣術の型



「すぐ効くと思うから、少しそのままじっとしといて」

そう言うと星原はすっと沖田から離れ、部屋を出ていく。一人残された沖田は、珍しく静かに天井を眺めていた。

「……玲姉の、型が変わってやがった……。あんなの、俺らとおんなじじゃねぇや……」

沖田は先程の星原との勝負を思い返して、ぼそりと呟く。星原の動きは昔一緒に通っていた道場の流派とは全く異なるものになっていた。
太刀と小太刀という違いはあれど、根本の型は基本変わることはない。それが星原の剣は完璧に変わっていたのだ。いったいこの十年ほどの間に、何があったというのだろうか。

「……んー……」

考えることで眠くなったのか、沖田は目を閉じ、寝息をたて始める。

「そろそろ動けるんじゃな……ん?」

少したって、星原が部屋に帰ってくると、畳に丸くなって寝ている沖田がその端正な顔に似合わない、苦悶の表情を浮かべていた。星原はその姿を見て目を細め、静かに沖田の側に座ると、その亜麻色の綺麗な髪をゆっくりと撫でる。

「……玲姉……俺は……」
「……大丈夫、ここにいる」

そのまま少し撫でていると、安心したような表情をして、規則的な寝息をたて始めた。それを確認した星原は、沖田の隊服に手をかけて、上着を器用に脱がす。そして押し入れから布団を引っ張り出し、掛けてやる。

「おやすみ」

寝ている沖田に微笑むと、星原はまた部屋から出ていった。


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