勝負
「小太刀で沖田隊長の太刀を受けようなんて、死ぬ気なのかアイツ」
「そんだけ自信があるんじゃねーの?女のくせに」
隊士たちはこちらから挑発にのったとはいえ、星原の気軽さに飽きれ、苦笑いした。それもそのはず、相手である沖田は真選組でも剣術に関しては若いながら秀でており、一番隊隊長、斬り込み隊長の座にいる人だからだ。
「いくぜィ、玲姉」
一瞬にして間合いを詰めてきた、沖田の刀が星原の身体に迫る。しかし、その攻撃は小太刀によって受け流された。
「っ!」
沖田は攻撃の手を緩めず、連続で斬りかかっていくが、すべて軽く受け流される。
「本気で斬りかかってきてる?それじゃ死ぬよ、総」
星原は余裕のある顔で、沖田にそう言う。ポーカーフェイスだった沖田も少し悔しそうに顔を歪め、それでも攻撃を緩めない。その攻撃はすべて受け流していくが、一切攻撃をしてこない星原。
「なんで攻撃してこないんでさァ!玲姉!」
沖田は一旦間合いを取って、叫ぶ。
「本気で来なせェ!じゃないと、もう一生姉上の件も許さないでさァ!」
沖田は分かっていた。星原がミツバのお葬式に来たくても来れなかったことくらい理解していた。星原がお葬式に来なかった時から抱えていた、ミツバを大切に思っていたのかという疑問も、さっきの涙でちゃんと解消された。
それでも、許さないといえば、きっと星原は本気になる。そうすれば彼女の本気が周りに示すことができる。そう考えて、沖田はそう叫んだ。
「っ!?……それは困るな!」
沖田の予想通り、星原は攻撃を開始する。沖田の目ですら、そのすべては見えない斬撃。小太刀という太刀よりもリーチのないものであるにも関わらず、負けないほどの強さ。そしてその隙があるように見えるのに、全く無駄のない動き。
「は……っ」
「……疲れたし、終わりにしようか」
沖田の荒い息に星原は攻撃をやめ、間合いを取り直す。そして左腕を振ると、彼女の指の間に針が二本挟まれていた。
「これ、軽い麻酔針だから、刺さったら動けなくなるから!」
「は!?」
沖田も隊士たちも一瞬ぽかんという顔をしたが、その間に星原は一気に間合いを詰め、小太刀を降り下ろすと同時に、その針を沖田の首筋にチクリと刺す。
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