挑発
それは挑発だった。
彼女は足手まといは君たちだと暗に言っていた。もちろんプライドを傷つけられた隊士たちは、その挑発にのってしまう。
「とっつあんの紹介だからって調子にのりやがって……」
「実戦で腰抜かすに決まってやがる……」
抜刀しそうになる隊士まで出てきた。
「ちょっ、玲殿!?お前らもちょっと落ち着け!」
「近藤さん。大丈夫、任せといて」
成り行きを見ていた近藤もさすがに焦ったようで、隊士たちを止めようとするが、星原はそれを止めて言う。
「私の実力が心配なら、一対一で戦ってみてもいいぞ?真選組で一番の実力を持ってる人と。それで勝てたら皆納得してくれるだろう?それとも複数対一がいいか?」
その迫力に隊士たちが全員、沖田の方を向く。沖田はめんどくさそうに欠伸をすると立ち上がった。
「しかたねェ、今回は玲姉の策に乗ってやらァ」
「あ、なんだ、バレてたか」
「そりゃあ、女だからってなめられんのが嫌いな玲姉が、こういう挑発すんならそういうことでィ」
星原は女だからとなめられぬよう、隊士を挑発し、手っ取り早く実力を示すという計画をしていたのだが、沖田はそれが分かっていた。
「ただし、一切手加減はしやせんぜィ?姉上のこともありやすから、そんなことできるわけねェんですが」
「ははは、手加減されたら困るんだよ?」
そして沖田と星原の一対一の真剣勝負が決定した。
道場へ場所を移して、沖田は太刀を、星原は小太刀を抜刀し、構える。
「それじゃあ、おいで?」
沖田の殺気とは反対に、星原は力を抜いて、にこりと笑う。
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