▼舞踏会への序章〜Der Anfang zu einem Tanz〜1

ここ、歩兎道学園の冬には一代イベントがあるらしい。と、廊下に大仰に貼られていたポスターで初めて柚音はそれを知った。

ー歩兎道学園・聖夜祭ー

ある程度さらりと読んでから柚音は興味を無くして、疲れた右手から左手に鞄を持ち直し、さぁ早く帰りましょうと玄関の方へつま先を向けた時、視界は黒で覆われた。

「…〜〜?!!」

突然のブラックアウトに悲鳴さえも出てこない。
そんな事を知ってか知らずか、その黒の正体は柚音が顔を上げた瞬間に、いつもの喧しい高笑いを始めた。

「ふははははは!迷える羊頭よ、何処へ行くのだ」
「……家です。それ以外に何かあるんですか」

出た末期中二病患者。
無駄に伸びた髪を三つ編みで流し、漆黒のマントを動く度に揺らしてかっこつけても、かっこ良かったら別に問題ないけれどこの男はかっこ悪い。

「まぁ良い、即刻夜会<サバト>へ行くぞ!」
「は、っ…ちょっと!?離し…!」

襟首をがっしりと掴まれ引き摺られ、柚音は泣く泣くドナドナを歌い出しそうな気分になった。



「ーーで?」

柚音は濁り切った目で目の前の男共を睨み上げる。くそ、お前らデカ過ぎんだよ!絶対デカくなって見下してやるからな、と頭の端で関係ない事考えていると、目の前でニコニコと笑う女装野郎が悪びれもなく話し始めた。

「いやね、柚音ちゃんて女子力が全然ないでしょ?」

憎たらしい程男とは思えない美少女のような仕草で頬を儚げに触り、可憐に話す鷹司誉は正直そこらの女子よりも女の子らしい。
中身が例え性悪拷問マニアだとしても。

「ケンカ売ってます?…というか、それと拉致に何の」
「そこで本題!柚音ちゃんはきっとパーティードレスなんて持ってないだろうから、この僕がきっちり見立ててあげようと思って☆」

えっへん。言い切って胸を張る鷹司誉を胡乱気に見つめて、柚音が首を傾げた。

「パーティードレス……?何かあるんですか」
「大ありだよぉ!クリスマスに聖夜祭あるのは知ってるよね?そ・れ・で、ダンスがあるからドレスじゃなくっちゃダメってこと!」

ダンスパーティー…………
そういえばさっき見たような…。

「私出ませんよ…そんなのタルいですし」
「ダメ。魔王様が柚音ちゃんを指名してるんだから!」

ー…え?





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