▼貧血の話

ユージンは何となく貧血持ちっぽそう



「ーーおはようございます、ユージン」

自室のベッドで横になるユージンの傍らへ歩み、サイドテーブルにそぉっ…と音を立てないようマグカップを置いてから、黒田は上司へ挨拶をした。

「……おはよう」
「この頃は特に貧血が多いかと思い、市場からブラッディ・メリーを仕入れておきましたよ」

ブラッディ・メリー。
ユージンにとっても他の吸血鬼にも必要不可欠なそれは、生きた人間の血を合法的に摂取が出来る言わば薬のような役目を持つ飲み物だ。
愛用者もそれなりにいるが、とても高価であるため未だに人間を襲って血を求める野蛮な輩もいる。

「……悪いけれど、それはいらない…低脳な奴等のように飢えて成り下がりたくはない」

それでもって上司は子どもみたいに強情なところがある。
一向にマグカップに手を伸ばさず天井をボーッと眺めている彼に、少し何かを考えた後黒田はニコッと微笑を浮かべ口を開いた。

「そんな顔色では可愛い顔がもったいないですよ、ユージン」
「??!」

かわいい……可愛い、顔だって…??
とんでもない事を部下から聞いてしまった。
というより、実年齢は置いといて外見的に可愛らしいのは幼顔の黒田の方だ。それに僕は至って普通の青年顔なんだから嬉しくもない、率直に言って屈辱。

だというのに言った本人は、どうぞ、とマグカップを勧め平静な笑みを向けていて、ユージンは呆気にとられながらも鼻先に掠める新鮮な匂いに、手を伸ばさずにはいられないと降参した彼は黒田からマグカップを受け取り、一口ゆっくり含んだのち一気に飲み下した。


ブラッディ・メリーを飲んだユージンは先程の貧血も回復し、椅子に腰掛け端末で顧客と連絡を取っている。

だいぶ血の巡りも良くなって顔色と体調も優れてきたユージンを、アタッシュケースに札束を詰めながら肩越しに眺め、黒田は小さく息を吐き安堵していた。

「黒田」

バサッ…ーと靡く外套から蝙蝠の羽に姿を変えた様に微笑んで、黒田はユージンの腕の中へ体を委ねた。


「もし貴方が飢えてどうにも出来ない場合は、私の血を吸ってもいいですよ」

人間界への道すがら、僕の部下はまたとんでもない事を言い始めた。

「…うん、熱は……ないみたいだな」

一応黒田なりに心配して言っているのに仇で返されるとはこの事を言うのだろう。

あぁ、でも私の血では人には及ばないかもしれませんね。
その呟きは心の中に留めておく事にした。
何せ私は『ーー』だから。





ーーーー
ユージンの口調が分からぬ。
一応最後はネタバレになっちゃいそうなので伏せておきましたが、いろいろ捏造しまくりです。
この2人は慕い合う関係の感じですが、メフィストフェレス登場時の黒田を引っ張るユージンさんは何か拗ねてるようにも見えるし、ちょこちょこと「僕の部下」「大事な部下」と言ってみたり、黒田からの変わったプレゼントも何だかんだ言って使ってるし、可愛いです。

でもってユー黒は情欲的な行為をしないイメージが強い。
けど何となく黒田は上に乗って乱れそうなイメージ…いや理想。

2014/5/7



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