プレゼント 






「貰っておけ」

そうして、受け取ったものは綺麗な透明感のある水晶がついた黒革のベルトだった。
見ただけで物凄い高いものなんだろう、とカイルはようやく息を飲み込んで送り主を見た。

「こ、これ……高かったんじゃ?」

喉から声を絞り出して確かめると、彼ーリオン・マグナスは一瞬で不機嫌そうに眉をしかめ、溜め息を吐き腕を組んでカイルを見据えた。

「無粋なところは姉さんに似たんだな」
「…」
「それに、僕を馬鹿にしてるのか?」

何をそんなに怒ってるのかさっぱりだが、このベルトは今すぐにでもつけた方が身のためかもししれない。
カイルはズボンにベルトを急いで通し、ニッコリと笑って。

「ううん、ありがと!なんかパワーが溢れる感じがするよ!」
「ふん、粗末にするなよ。僕は城に戻る」

結局このベルトだけ渡し終えると踵を返し城へと戻ってしまい、カイルは唖然とした。
リオン様が呼んでいるから早く来てほしい、という兵士からの伝言を聞き駆けつけたカイルからしたら、何だか腑に落ちない感じだ。

だけど。

「……かっこいいなぁ」

肌触りのよい革をなぞり、中央で一際輝きを放ち青空や道に咲いた花が映り込んだ水晶はとても綺麗で、遠ざかる小さくなった緋色のマントにカイルは無邪気な笑みを浮かべ、カイルも軽快なステップで帰路へと足を向けた。





「ふふっ…」

リオンの手がベルトに触れた時、頭の中に駆け巡った暖かい思い出に思わず笑みを零せば、訝しむ瞳が向けられカイルは更に微笑んだ。

「…何を考えている?」

あの頃のように不機嫌な声で咎めるリオンの頬を、愛おしそうに首筋から肩の曲線をなぞり胸の熱と心音を求め、滑らしたカイルの手をリオンは力強く拘束した。

「……随分、余裕があるんだな」

穏やかな微笑みに、艶めかしく動く手はまるで何もかも知り尽くしたように思え、リオンの心は静かに激情していた。

「ごめんなさい……ちょっと思い出してただけだから」
「…何を」
「リオンさんにベルトもらった時嬉しかったな…って」

カイルの答えに虚を突かれたリオンだったが、その顔は一瞬で綺麗な笑みに変わって、カイルの心臓は大きく脈打つ。
いつもの皮肉めいたものとも人を小馬鹿にしたものではない、素直な笑みがすぐそこにある。

見てらんない、けど……この笑顔がオレのものなんだって思ったらもっとくすぐったい。

「目を逸らすな、僕を…僕だけを」

見ていてくれーー視線が重なるとどちらからともなく瞳を閉じ、唇を優しく深くーそして荒く重ね合わせた。


リオンさんが欲しいなら、オレの全てをあげる。
きっと“どうしてもと言うなら貰ってやる”……って、言うんだろう。
そう思うとカイルはまた可笑しくなって、リオンの肩に顔を埋め、きつく瞳を伏せリオンの熱を受け止めた。


2014.3.21



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