小さな約束 


ジョブスさんと子カイル


任務から帰還し詰め所でなんやかんやと一服していた時、詰め所の扉が勢い良く開け放たれ兵士達は一瞬団長かと思い身を引き締めたが、その姿を見て一斉に肩やら体の力が抜け、歓迎する言葉が飛び交った。

「今日も元気だなぁカイル君は〜」
「おじさん達にも分けてくれよ」

声をかけた1人に頭を優しく撫でられるカイルの顔はどこか物足りないと眉を下げて、きょろきょろと見渡してから“こてん”と首を傾げる。

「ジョブスさんいないの?」
「…あ、あぁ…ジョブスなら多分便所だな」
「トイレ!いってきますっ」

敬礼して走り去って行くカイルを見て、敬礼された兵士は今度ジョブスをぶん殴ってやろうと固く決意した。


「ジョ〜ブ〜ス〜さぁ〜ん!あそぼーっ?」
「?!」 

トイレの外から聞こえてくる大きい甲高い声と走って来る足音に、ぼーっとしていたジョブスは驚き急いでトイレットペーパーで拭いてパンツの中に入れて、慌てて外に出ると息を切らしながらもカイルが笑顔で飛びついて来た。

「あそぼ!」
「わっちょっ…飛びつくなって…危ねぇだろ!」
「ねっねっ、はやくオレん家いこ!」

ぐいーっと。
服がはちきれんばかりに引っ張るカイルの襟首をお返しとして、ジョブスは目線と同じく持ち上げて額にデコピンをお見舞いする。

「引っ張んな…遊んでやっから」

やったー!!
ガッツポーズして喜んでいるのを見ながら、ジョブスは眉を下げて笑った。

だんだん重くなったな、と感慨深く思いながら。

「なぁカイル、でかくなったら俺んとこの部隊入れよ」
「…ジョブスさんの?はいったらいっぱいあそべるかな?!」
「…やっぱこいつバカだなぁ…」

乾いた笑みを浮かべながら短く溜息を零して、わしゃわしゃと乱暴に髪を撫で回し、柔らかい金糸を味わった。



2013.11.15




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