夢に見たドラマやアニメみたいな高校生ライフ。
カイルは入学祝いに貰った携帯のアドレス帳を一通り見て、にやけるを繰り返している。

その一連を隣で読書をしながら見ていたリオンは薄ら寒いものを感じた。

「……おい、気色悪いぞ。何やってるんだ」
「見て見て!こんなに友達できたよ!」

見て、と言われても見ず知らずの名前の羅列なんて見ても面白くない。興味無いと素っ気なくあしらうもカイルは喋り続ける。

「クラスのカイウスって子がね、すっごい気が合うんだ!今日友達になっちゃった」
「へぇ」

今度紹介するね、と言われてもされたところで自分に何をしろと。
たかが友人の1人や2人、どうしてそうもはしゃげるのか疑問だが、何となく、面白いとは感じなかった。

すると、カイルらしい特撮ヒーロー番組の主題歌とともに携帯を光らせた。
新着メール2件と先程話していたカイウスという名前が、ディスプレイに表示されるやカイルはメールを読んでニコニコと、ゆっくりと本文を打っていく。
リオンはそれらを胡乱に見た後、読書の気にもなれず徐(おもむろ)にテレビのチャンネルを、音楽番組に変えた。

カチ カチカチ…
カチカチ…カチ カチ

「……鬱陶しいからもうやめろ」

うん、と生返事のみ。ボタンを押す音が耳にしつこく響く。

カチカチカチ カチ

「…カイル、聞いてるのか」
「んー、聞いてるよー」

聞いてないだろ。
リオンの苛々が次第に募っていくのをカイルは全く気づかず、友達とのメールに華を咲かせご満悦な様子で指を動かしている。

入学する前は一緒にテレビを見て話に夢中になる毎夜だったのに、今では携帯とお友達状態である。

面白くない。

メールしたいならばトイレに籠もってやがれ、なんて拗ねた一心でリオンは容易くカイルから携帯を奪い取った。

「あっ!ちょっと…!?」

何するのさ!と驚いてこっちを向いたカイルなんて知ったこっちゃないと、リオンは自分の後ろに隠して絶対取れないようにする。
我ながら大人気なさすぎるが、こればかりはお前が悪いんだ。
正当性を主張した。

「リオンさん返してよ!」
「携帯なんか僕は知らないぞ」
「…なっ!」

つらっとガキじみた事を平然と言ってやればカイルの腕が伸びてきた。なるほど、実力行使で来たか。
だったらこっちもやってやる。

ぐいっ。

「……え?」

突然胸倉(むなぐら)を掴み引き寄せられたカイルの目がさらに大きくなって、ゆっくりゆっくりと顔に朱が差した頃ようやく自身の置かれてる身を理解したらしく、くぐもる声を発して必死に胸を押し返してきた。

「…ゃ、んん…!…」

ポカポカ叩いても服を握り締めたところで、僕は途中で止めたりなんて甘ったれた事はしない。
良い気味だ。いつまで抵抗してられるか見ものだ、と喉の奥で笑い飛ばしてカイルの唇を味わうように蹂躙した。



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