寒いなぁと思って身体を丸めて布団を手繰り寄せてから、あれ?何か変だって気づいて頑張って開かない目を擦ってでも開けてみると、そこには僅かな温もりだけを残して誰もいなかった。

「…行っちゃった?」

重い頭と身体をどうにか覚醒させようと伸びをして、ハッとする。
腰の怠い重みとシーツの乱れに、昨夜は何をしたのか鮮明に思い出してしまい、カイルは思わずにやける顔を抓ったり殴ったりどうにか直して、脚をゆっくりベッドから降ろしてぼんやりしていると、階下から美味しそうな匂いが鼻を掠め、カイルの眠気は一気に吹っ飛び体がリビングへと急いだ。

「おはよ〜リオンさん」
「…起きれたのか。今日は天気が荒れそうだな」

カイルが自分自身で起きてくる事に感動さえ覚える程、珍しく奇跡に近いのだ。
起こす手間が省けて幸いとリオンは新聞に目を戻した。

「…リオンさんのせいでしょ?あんな……おかげで腰が痛いんだからね」
「もっとしてと…強請ったのは誰だったかな」
「…、そ、れは…!」

昨夜の事が頭の中で再生され目覚めた時の熱が蘇り、カイルは咄嗟に牛乳をラッパ飲みし気を紛らわそうとしてみたが、リオンの視線を感じまた顔が熱くなる。

「…今日は遅くなる。戸締まりはしっかりしておけよ」

あ…時計見てただけか。
壁時計を見ながら新聞を片付け始めたリオンを見て、自分の勘違いが恥ずかしくなってきたカイルはソファーに座って、トーストを頬張った。

「誰か来たらまずインターホンを見ろ。無闇やたらに開けるな…それと毎回言ってるが、チェーンは必ずかけておけ」
「もう、分かってるってば〜」

テレビの電源をつけてあっちこっちチャンネルを変えて聞き流すカイルの態度に、リオンの目が一層険しくなる。

「それが人の話を聞く態度か」
「…そ、そんなに怒んないでよ…」

リオンの声色が低く厳しいものに変わり慌てて顔を向けると、目と鼻の先に彼の顔があり驚く暇もなく咄嗟に目を瞑ったら、唇に柔らかいものが重なった。

「ーー行ってくる」

それは一瞬で離れた。
カイルが放心状態の中鞄を引っ掴んでリビングから出て行くリオンの耳はとても赤くなっていた。

「……きをつけて…」

彼に届いたかは知らないが、玄関の閉まる音を合図に緊張の糸が解れて、カイルは顔を隠すようにソファーに倒れ込んだ。


2013.12.24



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