「リオンさんこれ取って!」

どこに行くのかと思いきやゲームコーナーのUFOキャッチャーに飛びつき、目をきらきらさせて指差すそれを見て、リオンは苦笑いした。

「なんだその不細工な猫は」

そう鼻で笑い吐き捨てると、カイルは更に瞳を輝かせた。

「ブサイクじゃないよ!だってこれリオンさんに似てるじゃん!」
「何だと?!」

黒目がそっぽを向きつり上がり口はへの字で牙が剥き出し、頭の部分が2つにアンバランスに分かれて黒い猫のぬいぐるみは、お世辞にも可愛い部類のものではない。
そんなものに似てると言われても嬉しくもなく、リオンの眉にくっきりと皺が刻まれている。

「いらん。帰るぞ」
「嫌だ帰らない」
「ほう。なら置いていく」

ぐいっ。
一歩進んだリオンだったが袖を物凄い力で掴まれ、後ろを振り返るとカイルの上目遣いの目に喉がこくりと鳴った。
見るんじゃなかった。

「………分かった」
「やったぁ!!」

馬鹿。僕の馬鹿、学習しろ。

「ただし、1回だけだからな」

我ながらの馬鹿な判断に最早ヤケとばかりに硬貨を乱暴に入れ、ボタンを慎重に押す。

「あっ!」

久しぶりのUFOキャッチャーは失敗に終わった。
窓に映るカイルの絶望感たっぷりな顔と、何とも言えない微妙な空気に「後1回だけだからな」と、念を押しまた硬貨を再度入れた。

それからも数回やってみたものの、タグには引っかかったがポロンと落ち、リオンの苛々は絶頂にまで達していた。

「……リオンさん、もういいよ帰ろ?」

UFOキャッチャーに張り付き物凄い形相で粘るリオンに、カイルは悪い気がして腕を引っ張った。

「うるさい。いいから黙って見てろ」
「で、でも…悪いよ」
「僕が取ってやるから待ってろ」

これで最後と、リオンは狙いを定めて再び硬貨を投げ入れた。

ーーーがこん。

「…あぁ!」

リオンの肩から張り詰めていた力が抜けた。
早速手に入れたぬいぐるみをリオンは出して、カイルに渡した。

「ほら、取ってやったぞ」

恥ずかしいのかぶっきらぼうに、ありがたく思えと言っているかのリオンの表情にカイルは噴出した。

「ありがと!大事にするね」
「あ…こら、抱きつくなこんなとこで!」

ここはゲームセンター。
学生から子どもに笑われてる。リオンにしたら生き地獄のようだった。


「この子の名前はリオにゃんだ!」
「やめろ」





ーーーーーー
UFOキャッチャーでいちゃいちゃ。
リオンさんゲームだろうとカイルが絡めば本気です。








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