中世ヨーロッパ?
いろいろ注意です
悪魔は人間の敵なり――何処かの国が掲げた時、世界は狂い始めた。
誰もが疑心暗鬼に陥って、最悪政治家が軍を行使して正義の為にと、悪魔狩りが決行された世の中は恐ろしく――
愚かしいものだと、1人の青年が笑った。
その顔は酷く切なく、悲しげに歪められていた。
街はいつしか罵声と銃声が響き、硝煙の匂いに塗れ、空には烏が飛び交ってこの檻のような世界を高みの見物をして、楽しんでいるかのよう。
そして自身も烏と同等だった。
「…お前、悪魔か?!」
「…っ!違うわっ!!」
少しでも人と変わっていれば、悪魔とされて悲劇を生む。
人々は顔を合わせればお前は悪魔か人間かと、悲しい挨拶を繰り返す。
「……カイル」
隣で腕を絡め寄り添って立つ少年に声をかければ、ゆるゆると顔をあげて「何?」と力の無い声色で聞き返してきた。
澄み切っていた筈の美しい蒼の瞳は負の感情を宿すような、グレーに染まって体は何かに支えられていなければ、今にも崩れ落ちてしまいそうな程弱々しく儚げで、胸を締め付けられた。
そうしてしまったのは僕の“存在”だ。
この世界が忌避するべき悪魔だから。
「…リオンさんのせいじゃないよ……悪いのは…」
ぽろりと、カイルの瞳から零れたものは次々と溢れ出して止める術も知らない。
「…――全部あいつら…人間のせいだもん」
人を信じる事を忘れて、根拠のない空想を信じて相互殺戮し合う穢れてしまった世界を、少年は憎んだ。
学校で仲良かった友人も、尊敬していた先生や近所の人も皆、殺された。
抵抗も反論さえも許されないまま非力な人間は散って、誰かを蹴落として生を保持する醜い人間ばかりがのうのうと生きている。
これほど人が憎いと思った事はなかった。
カイルは絡めていた腕を1度離して、まだ赤く腫れ上がった目を力強く開いて言う。
「オレも魔界に行く」
リオンはそれを聞きながら風を感じた。
なんて罪深い事を、僕はこの子に――
「だから……オレを悪魔にして」
純然たる暖かな強い人の心を持った君が、悪魔になると決意したなんて――なんて、笑えない冗談だろう。
「…本当に良いのか」
「……うん」
もう少年に迷いなどなかった。
リオンは静かに頷いて懐にいつも忍ばせてある“それ”をカイルの胸に翳した。
こいつの血に塗れるのが僕で良かったと、リオンは眠る愛しい亡骸を抱えて涙を流した。
――――――――――――
復讐と罪のない人間を救う目的で悪魔になった純粋な人間カイルと、人の死と穢れた世界を悲しむ人間らしい悪魔リオン……っていう皮肉めいた悲恋ものを目指したのですが、うーん…痛い。
とりあえず…こんな感じになってしまいましたが、受け取ってください!;;
※藍様のみお持ち帰りフリー
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