ハロウィン。本来の目的は悪霊を寄りつけないだの何だのと小難しいものだが、世界中の子ども達はお菓子を貰ったり、魔女や狼男に仮装したりとお楽しみ要素の多いハロウィンは愛されている。

それはアドリビトムも例外ではなく、女性陣は普段着ないようなレースが施されたゴシック調の魔女服を着ては、きゃっきゃっと騒いでいるのを見てはいられないと、リオン・マグナスは溜息を吐いてマントを翻し自室へと退散した。

ミーハーな祭が苦手というのも理由の1つでもあったが、何より依頼から帰ってきた身は休息を求めていたからでもあり、こうした騒がしい空気は甚だ迷惑で鬱陶しいと、不機嫌も隠さない足取りで自室に戻れば不機嫌の根源なるものが、そこにいた。

「お帰りリオン!見て見て、こんなにもらっちゃったよ!」

チョコレートにキャンディ、マシュマロといった甘味たっぷりのお菓子を両手いっぱいに抱え、至極満足な笑顔で近寄ってくるカイルに何とも言えない不快を覚え、その脇をすり抜けどっかりソファに腰を下ろした。
その突き放す態度を良しとしないルーティとスタンの困惑する目と、咎める目が突き刺さってもリオンは投げ遣りに視線を逸らし、ふと、テーブルの可愛らしい花柄模様のラッピングされた、ハロウィンにしては気合いの入っているお菓子が目に留まり眉に皺を刻み込んだ。

「何だあの派手な包みは」
「…?リアラからもらったやつだけど…」
「ハロウィンを何かと勘違いしてるみたいだな」

あれではバレンタインだろ、と鼻で笑い飛ばし、両腕を背凭れに伸ばし脚を組んでやればカイルは目をぱちくりさせて、困ったようにスタンとルーティを見たが視界の端で肩を竦めるだけだった。

「……あいつ、何であんなカリカリしてると思う?」
「………お菓子…欲しかった、とか?」

スタンのお気楽な返答に彼女は脱力しながら、彼の肩をポンと叩いた。

「あのね、あんたじゃないんだからそんな訳ないでしょうが…」
「おい、それどういう意味だよー」

自分の父親と母親の仲むつまじく話す姿にカイルも笑って眺めていると、突如。

「なぁカイル!これからパニールがパンプキンケーキっての作るんだってよ〜」
「暇なら来いよ」

騒々しく現れたロイドとカイウスが言った魅惑な単語“パンプキンケーキ”に、早くもカイルは底のない好奇心と食欲で目を輝かせながら、行くと答えようとしたが低い声が落ちる。

「こいつに餌付けしないでくれ」

微笑んでいる癖に目やオーラが冷ややかなもので、ロイドとカイウスはゆっくりと部屋から立ち去って行った。

「ぇっ、えづけって……オレ犬じゃないし!」
「煩い黙れ、お菓子貰っただけで喚くなバカ犬」
「な、ばっ…えぇ〜?!」

混乱するカイルを鼻を鳴らして笑い飛ばしソファに腰掛ける前に、テーブルにある包みに目を向けてそれを了承も得ずにリオンは口に放り込んだ。

このまま全部食べてしまえ、と子どもじみた悪戯心に苦笑した。



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VSもいろいろ考えてみたんですが、スタルー風味も少し取り入れてみたかったのでマイソロ2にしてみました。

いかがでしょうか;;
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