背中越しに伝わる体温がくすぐったくて、何だか居たたまれず身を捩ればさらに身体は拘束されて、胸が疼く。

「リオンさん…熱い」
「だから何だ」
「や、離れようよ」

ここお風呂だし。
こんなにくっついたらのぼせちゃうよ、なんて言ったところでリオンが素直に人の話を聞くわけでもなく、ちょっとでもカイルが動けば腕に力をかけ、自身の胸へと抱き寄せるんだから困った。

「大体、お前が一緒に入りたいと誘ったんだぞ。このくらい覚悟しておけ」
「な、…なんの覚悟…ですか?」

どうしてか嫌な予感がして思わず敬語になりつつも、肩越しに顔を覗かせるリオンに問えば、これまた嫌ぁな不敵すぎる笑みが返ってくる。

「さぁ?何だろうな」
「――んっ…」

かぷり。甘噛みされた耳が熱い。
なにこれ、変、だ。
よくわかんないけど、身体が熱い。

「…ゃっ…なんか…おかしい!」

やだやだ、と足をばたつかせどうにか逃れようと頑張るカイルを、嘲笑うかのようにリオンの拘束は強くて簡単には抜けられない。
抵抗すればする数だけ頬や額、首筋にキスが降りかかる。

「…ちょ、…ちょっと…リオンさんどーしたの?」

いつもなら軽く触れるだけのキスだったのに、なんか…今日はすごくしつこくて、変。

すると熱い息が耳元を掠めた。

「したい」
「……は?」

何が??
そう首を傾げどういう意味?と聞こうとリオンに振り向いたカイルの鼓動が早くなる。

黒い一房が額に張りつき顔に水滴が滴っていて、蜜を含んだ赤い唇が艶やかで。

綺麗だなと思った。
リオンさんはいつも綺麗でかっこいいんだけど、今のは反則だよ、ドキドキが止まんないじゃん。

「……どうした」
「え!いや、…な、なんかっ顔近いよ!」

惚けているカイルを不思議に思い、さらに顔を近づけて不敵な笑みをこれ見よがしに浮かべ、優しげに柔らかな声色で「ん?」なんて聞くんだから、その声はやめてよーって文句言いたくなる。

……リオンさんの声は大好きだけど…。

すごく恥ずかしくて真っ赤になった熱い顔を、リオンから逃げるよう逸らしたのが悪かったのか、視界の隅で片眉がつり上がるのが見えた。

「……僕にキスされるのがそんなに嫌なのか」

明らかに怒気の含まれた声。

「、そんなわけないじゃん!」
「じゃあ何故逃げる?」

その鋭い瞳に拘束されて、カイルもリオンから目を外す事も瞬きさえも忘れてしまった。

「だって…!リオンさんかっこいいから、恥ずかしくなったんだもんっ!」

前髪を掻きあげる仕草も、何もかも全部が1つ1つかっこよくて、普段と違ってて……誰か知らない男の人みたいで、怖かった…。


「……キスしたくないとか、そんなんじゃないんです…」
「…分かった」

え、何が?と驚いて顔を向けると、少々仕方ないとリオンが一息吐きカイルの肩に優しく触れた。

「今のところここでのキスは我慢してやる。だが、…僕だって気を長く保てる自信はないからな、覚悟しておけ」

つっけんどんと不器用に吐き捨てる姿がおもしろくて、落ち着かなくて固まっていた身体も解れていく。

そして、イタズラっ子の笑みをリオンに向けて言い放った。


「なら、続きはベッドがいいなぁ…」

おもしろい程に目を見開いてカイルを睨みつけ、悔しさを苦々しく吐き捨てた。

「……反則だ、バカが…」




――――――――――――
ようやく仕上がりました!
うぅむ……ちゃんと激甘になってるのか不安です。
このサイトには少ない裏的な要素も盛り込んでみたのですが、…いかがでしょうか?

少しでも気にいっていただけたら、もう何よりです。


※夏耶様のみお持ち帰りフリーです。



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