「月閃光!―カイル!!」

華麗な剣の一振りが月のような弧を描き、モンスターを斬り上げる。

「疾空連殺剣!!」

急所を突かれたモンスターは断末魔をあげ隙を許したところを、カイルが力強い一撃でトドメ差しモンスターの息は事切れた。

「あんたら息ぴったりねぇ〜毎度の事だけど」

ファースト・エイドと、回復魔法をスタンに施し2人に感心すると、それが嬉しかったカイルは照れたように笑いリオンを見つめて、またはにかんだ。

何て可愛らしい反応をしやがるんだと…リオンはにやけそうな口元を必死に堪え、咳払いを苦し紛れに1つしたところで照れてるのはバレバレだ。
カイルの事になると嘘もヘタクソな彼に、ルーティもしょうがない奴と眉を下げて微笑んだ。

「…でも妬けちゃうよなぁ……親友とられちゃったみたいでさぁ」
「誰が親友だ。僕はなった覚えもなるつもりもないぞ」
「あら、あんたとはスタンは言わなかったわよぉ?」
「……っ!!」

何だかんだと文句は言うもののリオンはスタンを心の底では認めていた。それさえ分かればスタンも満足だった。

「さっさと帰るぞ!僕は疲れた!」

認めたくないなら否定すればいいのにしないのも…という事。
3人は顔を見合わせ素直じゃないんだからと笑って、彼に置いて行かれないよう追いかけた。
――が、それはスタンの叫ぶ一声で遮られた。

「―カイル!!」

まだモンスターは生きていた。油断したところを格好の獲物だと狙われてしまったカイルは剣を抜いた。

どちらが速かったか。
モンスターの暴挙と同じ瞬間に、緋色のマントが――

「「リオン!!」」

気味の悪いガスが2人を襲った。意識が失いかけるその時まで、何としてでも胸にカイルを庇い、カイルとともに地面に体を打ちつけた。

意識を手放してもなお、リオンの腕はカイルを力強く抱きしめていた。







あれからモンスターはスタンとルーティが倒し、バンエルティア号に運び込まれたリオンとカイルは医務室で絶対安静と、アニーの治療を受けている。

正体の分からぬガスを全身に浴び未だ意識も戻らず眠っている2人をスタンとルーティ、事の全てを知ったリアラが早く目覚めないかと今か今かと待ち望んだ。

「……どうしよう…このままカイルも、リオンも目覚めなかったら……」

最悪、死に至るガスだったら…?
リアラの体が震えた。
初めて恋心を知り切ない失恋も経験させてくれた少年と、良い意味でも悪い意味でも好敵手だった…密かに友達だと思っている少年を、一気に失うのはあんまりだ。

「……ん……」

悲しみと不安がたちこめる暗く沈みきった医務室の空気が、少年の息遣いで変化する。

「リオン!目が覚めたの?!」

なりふり構ってらんない勢いでルーティがスタンとリアラよりも早く、覗き込み肩を揺らすのをリオンはぼんやりと感じた。

「………かぁ、さん…?」
「……何言ってんのよ、私はルーティよ…」

こいつの寝ぼけたとこ見れるなんてレアね、と安堵し胸を撫で下ろした時、リオンに呼応するように隣のカイルが眉をしかめて瞳を開き―

「良かった…!!…カイルも…」
「……スタン、頭にひびく…」
「あっ!あぁ、ごめ………ん??」

あれ?……何か変、だぞ??
睨まれてつい萎縮したスタンだったが、ルーティとリアラも同じように眉をしかめていた。

「………何だ?」

確かにカイルなのに、カイルなのに……雰囲気が全く違う。

「……あんた……もしかして、リオン…?」
「…?他に何だと言いたいんだ」

と、金髪のツンツン髪が当然のように言ってのけた。
隣では未だ寝ぼけて思考の働いていない黒髪がいる。

「「「………え…?」」」

スタンとルーティ、リアラの理解の果てはもう越えていた。


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