「暇だ。何とかしろ」

兄様はこうして無理難題を突きつけてくる事が多い。
暇ならば読書か散歩なりとすれば良いのに、とは決して口が裂けても言える筈がない。

「……と、言われましても僕にはどうする事も出来ません」

申し訳ありません、兄様と誠意をきちんと込めて頭を下げれば、その瞬間強い刺激が頭のてっぺんを襲った。

ぐりぐりぐりぐり。

「……あ、あの……兄、様?」
「ん、何だ?」

あろうことか、この失礼極まりないバカ…否、兄様は僕の頭のてっぺんを靴のヒールで効果音をつけるならば、“ぐりぐり”しているのだ。

「何だ、じゃないでしょう!痛いんですからやめていただけませんか?!」

貴方はそれで愉しくとも僕はただ痛いだけ。
黙ってなどいないぞとヒールから頭を避難させ、立ち上がって兄―國卒に猛抗議を始めるも金髪の分け目を余裕とばかり整え、悠然たる態度で弟の極卒の動向を眺めている。

なんて王者の風格だろう。

「ふん…それではつまらん。私は暇なのだ」
「僕は読書中なのですが」

古書を取り扱った店で買ったばかりの本を読もうと楽しみにしていた午後の余暇を、もう一度…とはどうやら叶わないらしい。

國卒はそれを一瞥して面白くもないといった風に吐き捨てた。

「使えない愚弟だ」
「…兄様はもう少し余暇を休む事に使ってはどうですか?」

いつも朝昼夜関係なく、軍事会議に出ている兄の疲弊した体を労る弟の心はきっと國卒には届いていないのであろう。

「性分でな。どうも落ち着いていられないんだ」
「貴方は雪を見て喜ぶ犬ですか!」

この喩えは何とも微妙だがこの際何でもいい。
僕に物理的被害が阻止出来れば。

「まぁ、だがしかし。幾分か暇は潰せた。読書を続ければいい、私は少し外に出る」

兄はそう言って外出支度を着々と済ませ、部屋から出ようとするのを極卒は溜息を吐いた。

この身勝手な兄の所為で読書を楽しむ気も失せた頃だ。
広い家に一人きりもまた寂しいこと。

「兄様、僕も一緒に行ってもよろしいでしょうか?」

國卒は一つ微かに笑った。

「勝手にしろ」



―――――――――――
初國卒+極卒。
2人の口調とかちょっぴり違和感…;;

多分この兄様は極卒と出かけたかったんじゃないかなと。
回りくどい気もしますが;


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