美しい花やレース、シャンデリアなどで豪勢に彩られた輝かしいパーティー会場の席で、これまた不似合いに不機嫌ですよと体全体で表すカイルがいた。
今夜は騎士国家フレスヴェルグにおいての記念すべき祝賀会。

ユグドラシルバトルで数々のシグルスを打ち勝ち、『大いなる実り』を持ち帰った二人のシグルスを賞賛し、国の明るい未来を喜ぶといったものだった。
テーブルにたくさん並べられた料理やワインを談笑しながら楽しむ人々の中、カイルはそんな気分になれなかった。

育ちの良さが一目見ただけで窺える仕立ての良いフォーマルに身を包み、国の高い階級の人間と話すリオンをぼんやりと見つめて、零れてきたのは深い溜息。

そのリオンと何やら楽しげに話しているのは、ブロンズのロングストレートの可愛らしいお嬢様。
……あ、…なんか胸が痛いや。

オレの事なんか全然見てくれない…
何だよそれ。むかつくなぁ…

「ふんだ……風でもあたりに行こうっと!」




昼間の暑さが嘘のように夜風が心地よく吹くバルコニー。

「…星きれいだな〜……」

何かすごく寂しい人になった気分なんだけど…。





「まぁ…リオン様はいつもピアノを弾いていらっしゃるのですかぁ…」

すごいですわぁ〜。
女の猫なで声は耳に刺さる。媚びなければ話せないのか?……心底疲れる。

「ぜひ聴かせていただけませんこと?わたくしもヴァイオリンを少々嗜んでおりますの…」
「……是非、機会があれば。それでは私は甥と話があるので失礼させて頂きます」

早々に切り上げるべきだったのにブロンズ髪の女は、無駄にだらだらと話が長くなかなか逃げれず、気づいたら会場には甥―カイルの姿がなく、スタンやナナリーの所にも見あたらず舌打ちをしそうになった。
だが、大体の見当はついているリオンはバルコニーへの扉を開けた。

流石と言うべきか、そのカイルは夜空を見つめて何か考えているようで、バルコニーに来た事にも気づいていない様子だ。

「カイル、体が冷えるぞ」
「――…リオンさん…」

ふわりと、カイルが寒くなければいいと自身の背広を羽織ら

「…大丈夫、オレ寒くないから…」

どこかその突き放す声が、眉を顰めさせた。






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