(マイソロ2)



彼はとにかく甘いモノが好きだ。
そんなところが可愛いくて、あのいつものクールが嘘みたいに微笑んでくれるから、絶対譲らないんだ。



「リオン、今日はロールケーキだよっ!」
「…お前は依頼をさぼって料理か。全く暢気(のんき)な奴だ…」

冷たい言葉は吐くがクエストが終わったら何かと足を運んでいるのを、知っている周りからしたら呆れものだ。
素直にありがとうくらい言ったら?全く…とルーティが呟く。

そんなんじゃいくらカイルだってアンタを見限るわよ、とリオンに小声で言えば「余計なお世話だ」なんて無駄に強がるのは本当に悪い癖だ。世話が焼けるわね…。

…と、そんなとこにこちらもクエスト帰りなのだろう、腹を撫でてキョロキョロとするカイルの友人というよりは親友のロイドが来る。

「おぉっ!うんまそ〜〜それ食べていいか?!」

そこまで甘党ではないが疲れきり空腹を満たしたいロイドの目には、ロールケーキは獲物としか見えていない。カイルがいいよと言う前に伸ばそうとした手は、青が遮った。

「意地汚いぞ!!お前はパニールので十分だ!」

眉間にくっきりと皺を寄せ、目で殺さんとするリオンの気迫にロイドや食堂にいた者も、驚いて固まっている状況にも関わらず能天気なカイルは、ふにゃりと笑っているのだから凄い。

「……これから一緒にどうだ?部屋の方が静かだからな」
「うんっ!!」

照れ隠しに目を逸らして返事は分かっているよな?と言わんばかりに腕を組む姿に、可笑しくなって笑うとリオンに睨まれてしまったが、カイルは思いっきり腕にしがみつき不満だと言うような態度をとるが、リオンの口許は柔らかく…。


食堂を出て行った2人をパニールは温かく微笑んでいた。





「もっと甘い方が僕は好きだ」
「ちょっと控えめにしすぎちゃったかな?…次はクリームたっぷりにするよ!」

こんな細かい我が儘でも嫌な顔を一つもしないで聞いてくれる…そういうお人好し過ぎるというのか、健気というものかそこが気に入ってるとこでもある。

「ところでお前、…最近料理ばかりだな。何かあったのか?」

スタンやルーティが依頼を誘っても、決まって料理したいからとここのところ断っているのは疑問だ。

有り難くないといえば嘘になるが、こう何回も断れると僕だってもやもやする。
ここに来てからはスタンとルーティ、僕とカイルは度々依頼を一緒にこなすのが当たり前となっていたが、最近の付き合いの悪さは正直不満だ。
…人の事は言えないが。

「……ん、…オレ、食べてもらいたい人がいるからさ…練習してるっていうか」

歯切れの悪さと泳ぐ視線がどうも気に入らない。それに……


「…誰だそいつは」
「、えっ…!?」

そこまで聞かれると思ってもいなかったカイルは、何故だか動揺していて言いにくそうに頭に手を置いた。

「…つまり僕はただの練習台か」

言葉にするとダメージは酷く、胸の内が苛々する。
カイルの作るお菓子は絶対誰にも譲るものかと、密かに決めていたから。

「ち、違うよ!リオンに食べてもらいたいから作ってるんだよ?!リオンの笑顔……オレ見たくて…」


リオンが大好きだから…。
か細く紡がれたその言葉は、聞き間違えたのではないかと耳が―脳が疑った。




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