※39歳×20歳です


少しずつ、少しずつ。

オレはあなたの隣にちゃんと立ててるかな?


初のシグルスとして戦いを潜り抜けてあれから5年、幼さはいまだ残る顔立ちだが大分落ち着いてきたカイルも騎士団長の次期候補として、副団長を担っている。それに意を唱える者はいない。

「――任務の報告は以上です。失礼しましたっ」

やっぱりかしこまるのって苦手だ、とカイルは苦笑した。
2人の見様見真似でやってみても気恥ずかしさは残るもので、未熟さがよく分かる。

一連の王への礼儀作法も終え王座を離れ廊下に出ると、ともに任務に出ていた兵士がいてカイルはすぐに駆け寄った。

「お疲れ様!」
「―副団長!…お疲れ様です!」
「今日はすごくハードだったからしっかり休んでね」
「ありがとうございます!」

労いの言葉をかけるのも上の役目であると、父親から学んでいたカイルは欠かさず日課にしていた。
信頼関係に上下など関係ない、それがカイルのスタンスだ。

「――帰ってたなら一言くらい無いのか」

兵士との会話に割り込んできた声は前よりも低さを増し、腕を組み悠然と構える彼―リオン・マグナスは兵士を威圧的に睨んでいた。

その瞳に平静でいられる人間は一握りだろう。
兵士が失礼しましたと去っていくのを気にも留めずに、リオンはカイルの頭に手を置いて微笑んだ。

「お帰り」

先程までの重苦しい空気は何処へやら、暖かく柔らかい。
前髪を梳いて額に唇を落とした時に、あぁ…とカイルの心は言葉では言い尽くせないもので溢れて、夢中で彼の背中に腕を回した。

「ただいま。――エミリオさん」

いつしか彼が明かした本当の名前を紡いだら、満足そうに笑うからカイルはほんの少しだけ意地悪したくなってわざと

「エミリオさん、大好きだよ」

ニンマリ笑って言ったら鼻で笑い飛ばしてカイルの顔を覗き込んで、不敵な笑みで言い放つ。

「こんな城の中で熱い告白するとは度胸がある」

適わないと分かっていても、対等に立ちたくてカイルも笑った。

「だって本当に大好きだから」

あの15歳だった頃なら、彼の顔が近くにあっただけで顔を逸らしてたけど、今はこんな風に言い返すのもちょっとは上達した。

それでもやっぱり、

「そうか、僕はそれ以上に愛してる」

適わないんだけどね。


―――――――――――
こいつら誰。
城の廊下のど真ん中で告白大会する恥ずかしい人達の一番の被害者は、周りの兵士で2人を廊下や庭で見かけたら何も知りませんよって感じにスルーしてたらいいな…って思う。

一応裏設定でリオカイ達は結婚してます。多分。

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