海のさざ波しか聞こえなくなった船室は、微かなランプの灯りだけが煌々(こうこう)と揺らめいている。
リオンはともかく、夜空を見上げて物思いに耽り込んでいるカイルからも何も話さなかった。

珍しいほどの静寂な夜。
カイルが一体どんな表情で月を眺めているのかは、分からないが安堵と寂しさだけはしっかりと伝わってくる。

そんな姿はどうしても黙って見ていられないのが、自身の甘いところだと十分自覚していてもこいつの悲しんでる顔は御免だ。調子が狂うんだ。
リオンは磨いていた剣を壁にそっと立て掛けて、窓の向こうを覗くカイルの隣へ歩んだ。

ただの闇に染まった真っ青な大海原を静かに見つめるカイルが、もしかしたら消えてしまうんじゃないかと柄にもない考えが頭に過ぎって、本当に柄もなく腕と躯は自然と動いてしまっていて自分でも訳も分からず、この小さく儚げな少年を包み込んでいた。

「……いいから泣いてしまえ、誰も見てない」

それをきっかけにカイルの溜め込んでいたものが、一気に流れ落ちていった。
瞳から零れる光る雫が海面に浮かぶ月や星なんかよりも美しく尊く、全てを受け入れてやりたくなる。

「…泣き叫べ、感情をぶつけろ」

我慢して嗚咽を抑え込むな、泣き下手が。
笑ってばかりいるから泣き方も忘れたか?

「お前はいつまでもガキのままでいい」

バカみたいに大人のふりして強がるな。

「……寂しいなら図々しく甘えてこい」

そう強めて言ったら、やっと背中に腕が回って僕はきつく抱きしめ返した。



―――――――――――――
スタンが生きているの知って泣いたカイルを何でリオンは抱きしめてやらないんだ。
あんな弱ってるカイル即お持ち帰りしてやりたいこっちの気持ちも考えろよリオン!

魔界でカイル庇ったのは最高だけど∀`)



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