微会話文



「ちょいと、あんたさぁ」

ちょっとした届け物―常人には用途の分からぬガラクタ―を渡したら、さっさと帰ろうとラボを後にしようとした2人だったが、ナナリーに止められリオンは片眉をしかめた。

「何だ、僕は忙しいんだが」
「カイルとイチャイチャする事に、でしょ?」

ハロルドが余計な一言をほざいたが、反応したら負けだ…てか面倒だからシカトを決めこんだ。カイルは多少顔が赤いが。

「イメチェンとかしないのかい?」
「…する必要もない」

全く面白味も可愛気もない返答だ、…34歳男性に求めるものでもないけれど。

「リオンさんは朝ずっとセットしてるから、気にいってるんだもんね?」
「ばっ…余計な事を…!」

早朝の密かに欠かさぬ日課を暴露される恥ずかしさは異常だ。
後で覚えておけよカイル…

「ふぅ〜ん…あんたも少しは可愛いとこあるのねぇ」
「可愛いはいらん!」
「うん、リオンさんって結構可愛いとこあるんだよ!」

ちくしょう……お前はどっちの味方なんだ?
今日程この恋人をボッコボコにしたいと思った事はない。
鎮まれ、僕の拳…!

「…ん〜、じゃあとりあえずあんたの似合う髪型の候補あげるわ」

そしてピンクには人間大砲になってもらいたい。
飛んだ衝撃でその暗黒脳内が浄化されるだろう。それがいい。

ビシリ!ハロルドが人差し指をリオンに向け、言い放った。

「オールバックね!」
「ふざけるな!ハゲるだろうが!」
「…えっ!ハゲちゃうの?!」
そんな些細なカイルの疑問にご丁寧にナナリーは、くわしく教えていた。本当に全部理解したのか定かではないが、カイルは納得したと笑顔で頷いた。

「僕はこのアシメで十分だ!いらん世話はするな!」
「へぇ…アシメって言葉知ってたんだねぇ」

何気に酷いナナリーの無自覚なトドメがリオンの自尊心ははち切れる寸前だった。

と、そんな時。

「……オレ、リオンさんのオールバック見たい」

「……は?…いや、だが…」

若ハゲには……なりたくない。

「リオンさんオールバック似合うと思うし、それに…絶対かっこいい!」

かっ…か、かっこいい??
心臓が壊れるくらい、鼓動が早く……

「だから……ダメ、かな?」

きょとん。
他から見たら首傾げて見上げているだけのカイルの姿も、リオンには小動物な仕草に可愛らしい上目づかいに塗り変えられていた。

「仕方ないな。そこまでお前が言うなら、オールバックにしてやる」

カイルに褒められた嬉しさを噛み締めて笑み、わざとらしく前髪を掻きあげるリオンの姿と、それにほんのり顔を赤らめるカイルにナナリーは単純…と呟いた。

「…もう…あんたら、熱苦しいからさっさと帰んなさい」


そしてラボ冷却しろ。



――――――――――――――――
後日リオンはオールバックでカイルとイチャイチャしてましたとさ。

バカップル目指しました。
かっこいいと言われると舞い上がってテンパるリオンは、本人には悪いけど可愛いですまじで。





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