*現代パロ、リオンと暮らしてる設定



午後9時過ぎを回ろうとしている頃、リオン・マグナスはドス黒いオーラを身に纏い腕を組んで立っていた。

「ただいま〜」

と、そんな事知ってか知らずか、能天気な笑顔で家に帰って来たカイル・デュナミスにリオンは、カッとギャグ漫画さながら目を見開いた。言うべきはただ1つ。

「今何時だと思ってるんだ?!」
「うん、9時かな」

にへらっと、さらりと。
コイツは僕を怒らせる事に長けすぎてる。これで何度目だ。

「門限は7時までだと決めた筈だが?……まさか、変な奴らとつるんでるんじゃないだろうな?」
「…オレもう高1だよ?子どもじゃないんだからさ。それに、オレの友達は皆いい子だよ」

欠伸しながら“喉渇いた〜”と何も悪い事なんてしてませんオレな態度に、リオンの眉やら口元が引きつっていく。

「夜遅くまで遊びまわす奴らが良い子な訳あるか!今すぐそいつらをここに呼べ!!」
「…なっ何言ってんのさ?もう9時だよ?!」
「9時まで遊んでたお前が言う筋合いはない!!」

うっ…と押し黙り口では勝ち目はないと悟ったカイルは自室へと駆けて行った。減らず口は忘れずに。

「リオンのばぁ〜か!」

もうこれもお馴染みの捨て台詞なので、リオンは疲弊しきった体をソファに預け天井を見つめ、視線をゆっくり隣の部屋に向けた。

僕は、教育を間違えたんだろうか。

カイルが目に見えて生意気な態度をとるようになったのは去年の夏頃。
今までは自分を“リオンさん”と呼び、通学も休日の買い物も一緒だった。それが当たり前の日常だった。
“あの日”までは―…

「………スタン、姉さん。僕はカイルに…」

必要とされてる…だろうか?
仲睦まじく笑い合う2人の写真に問いかけ、リオンは自嘲した。


クラスメートの騒がしい声を耳からどこかへ流れて消え、窓から吹く風にカーテンが揺れるのを気怠く眺めて、溜息を1つ。

「ねぇねぇ昨日ママとスカイツリー行っちゃった!」
「え、いいなぁ〜私も行ってみた〜い」

スカイツリーの話だとか。そこの景色がすごく綺麗だったとか。
そんなものカイルにはどうでもよくて、ただ、辛くて。涙が溢れてきそうだった。
それ以上に悔しさや悲しみで頭が痛くて、体が熱くて堪らないと気づいた時にはもう、意識を手放していた。


あぁ、これは夢かな。

父さんがいて…母さんのあったかいシチューを食べて、オレが笑ってる。
美味しくて美味しくてハシャいでるオレに母さんが呆れて笑って……
それから、

リオン…さんが…――

「……苦しいなら、まだ寝てろ」

怒ってるような悲しんでるような、よく分からない表情のリオンがいた。
どうしてベッドに寝てるんだろう…?ボーっとする頭を無理矢理覚醒させて考えても、答えが出ず首を傾げているとリオンの手が自身の頭を撫で立ち上がった。

「…学校で倒れたんだ。熱が下がるまで寝てろ、僕は夕飯の買い出しに―」
「行かないで……そばにいてよ」

現金な奴だって怒られるかもしれない。昨日はあんなに怒らせちゃったから…、それでも。

ふと、リオンは掴まれた腕を見て保健室の先生に言われた事を思い出した。
甘えたいけれどどうしていいか分からなくて、リオンに怒ってもらって構って欲しい――あぁ、そういう事だったんだなと納得した。

「……僕の膝に来い。特別だ」
ベッドに乗り上がり、リオンは腕を広げた。カイルがうんと小さい頃ルーティがしていた事だ。

「…リオンさん…」

今までごめんなさい、涙を流し弱々しく胸の中へ飛び込んだ小さな背中を、リオンは優しくさすった。

「……リオンさん…あのさ…」
「…何だ?」

ぽろりと零れ落ちそうな涙を親指で拭き柔らかく微笑めば、少し照れたようにはにかんだカイルが服を強く掴んだ。

「…リオンさんの事…ホントはね、大好きなんだ……だからね、オレから…離れないで」

もう涙は見せたくないという意思表示にカイルは胸に顔を埋めて、背中へと腕を回した。

「お前も…僕から離れるんじゃないぞ」

この甘え方が幼稚で不器用なお前を、僕は愛してる。

誰よりも。

――だから、お前の涙は僕が拭ってやる。




――――――――――――――――
スタンとルーティを死なせてしまいました…ファンの皆さん申し訳ありません…!

今回はCP要素薄めな家族愛(?)を目指しました。
初めの予定はスタンとルーティよりもカイルラブ!な厳格過保護な叔父リオンな話にしようと思ったのですが、なんか……シリアスになっちゃいました。
最後の一文は是非リオンに言わせてみたかった言葉だったので、無理矢理入れてみちゃった訳です(笑)

しかし…うん、久々の更新でCP薄なリオカイって…;;




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