仮面の奥の瞳が密かに揺れる。

日当たりが強く風の心地よく吹く甲板に、男女の笑い声が響く。

そこには世界は違えど、かつて旅をともにしたスタンとルーティ、顔立ちのよく似た妹のリリスにもちろんのことカイルと――リオンが、楽しげに話している姿があった。
何の話をしているのだろうか?
ここからでは所々の単語しか聞こえず、楽しそうな雰囲気しか分からない。

――否、あの空間はジューダスにとって不可侵領域なのだ。


「もー…リオンさんてば〜」

彼奴が何かしたらしくやれやれといった風に笑うカイルの姿に、足も瞳も――脳さえも機能を忘れてしまった。

じゃれ合うリオンとカイルは、まさに叔父と甥で。
自身のどんなに後悔して望んでも、叶わぬ理想を彼奴は…――


この『リオン』には容易く叶えられる。

過去を断ち切り名を変えた“ジューダス”じゃないから。


嗚呼、

――初めてリオンを羨ましいと、浅ましくも僕は思った。

一度は断罪した過去の自身の姿だというのに。





――――――――――――
きっとジュダは楽しそうに話し合う5人を見た時、ちょっとはこう思ったんじゃないかなぁ?…と。
世界は違っても5人には強過ぎる家族の絆があったりすると思います……多分。




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