ホワイトクリスマス
街はツリーやリースが飾られ、クリスマス一色だ。彩りの明るいイルミネーションがさらに人の心を弾ませた。

街頭に立つサンタの格好をした人が子どもにプレゼントをあげていた。中身は箱いっぱいのお菓子だった。
少し懐かしいなと思い出して微笑む。
あの時は隣に父さんがいて、大きなケーキとチキンを買ってもらって嬉しかった。

だけど、それも、もう…

帰ろう
家族連れやカップルで行き交う道を、決して見ないようにとカイルは帰路へ人と人との波に流されながら歩いた。


「……あーぁ…1人でケーキか」

テーブルにぽつんと存在感を放つ苺が花のようにデザインされたケーキはナナリー特製だ。
豪華でおいしそうだけど、…おいしそうなんだけど、こんなの1人でなんか食べきれないよ。

時計を見ると8時過ぎ。クリスマスだというのに何にも楽しめなかったじゃん!、とクッションに八つ当たりを込めて殴りつけた。
もちろんそんな事しても落ち着かず、それ以上に悲しみやら悔しさがぐちゃぐちゃ暴れて、余計に虚しくなるばかりで無駄だとは分かっていた。

今日1日で何度目か分からない溜息を零し尽くし、もうどうしようもないんだ、さっさと寝てしまおうとカイルはコートとマフラーを、その辺の床に脱ぎ捨て自室へと引きこもった。

――結局、リオンさんも来てくれなかった…な。

ささやかな望みもこんな時間では…もう叶わないと諦め、眠りに就こうと瞼を閉じようとした時、
「何だこのコートは…」

唐突に、突然振り落ちてきた声にカイルも目が丸くなる。
幻聴?それとも幻覚…?
未だに放心状態中のカイルのとぼけた間抜け面に、なんて顔だとリオンも困惑しとりあえず再び声をかける。

「目を開けたまま寝てるのか?変なところで器用な奴だな」
「……、…リオンさん…」

のっそりと起きてきたカイルはおもむろにリオンに飛びつき、そのままぐらりと抱きついたままベッドへと倒れ込み、リオンもこれには流石に動揺も隠せず離そうとした――が。

「……お願い…今日は、一緒にいて?」

今日だけでいいから。
隣にいてほしい、とにかく抱きしめてほしい。
我が儘な奴だって呆れないで…

震える肩でしがみついて離さない頑固で弱々しくもある腕を、リオンはカイルの体ごと全てを包み込んだ。

「…仕方ないから、お前の我が儘を聞いてやる」

ぶっきらぼうだったとしても、それが何よりカイルには嬉しくて安心して、すぅ、と強張っていた体の力も抜け落ちた。

「…ありがと……リオンさん」

そう言って笑った瞳から、小さな雫が一粒流れた。


(“本物のサンタ”にはなれないけれど)
その寂しさも我が儘も、全部僕が貰うから



――――――――――
メンタル弱いカイルたん
スタンがいなくなってからの3年間くらいの空白はかなり美味しい。
クリスマスの話なのに切甘すぎた…
とりあえず、弱ってるカイルは可愛いからリオンはそのまま襲え←




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