(―あ…)

「リオンさん!桜咲いてるよ!」

昨日までは青い生命だった木々に、淡いピンクの花が芽吹きカイルの心もハシャぎだす。

一方。リオンは難しそうな堅めの分厚い本を紅茶を片手に嗜んでいる貴族の風格だ。もう読書は出来そうにないなと諦めて枝折(しおり)を挟み、気怠そうに立ち上がりカイルの隣に歩んだ。

「全く…毎年毎年飽きない奴だな。桜なんて春になれば必ず咲くんだから、珍しい事じゃないだろ?」
「…もー、リオンさんってばロマンがないなぁ」

ぷくー、なんて片頬を膨らませて子どもみたいな反論するカイルに苦笑して、そっと肩を引き寄せた。
もう慣れた胸の温かみにカイルも、頭を当然だというばかりに預けてまた外を見る。

暖かな陽気を浴びて緩やかに舞う一片たちを見て、何となく呟いた。

「…桜ってさ、春の雪みたいだよね」
「…、お前は何処の少女だ?」

なんとまぁ、夢見る乙女のポエムみたいな事を恥ずかしげもなく…。
聞いてるこっちが恥ずかしくなるじゃないか。
もしかしたら脳の中に乙女思考がプログラムされているのかもしれないな。

「おい、もう桜はいいだろ。こっち向け」

そんな事よりも、だ。やっぱり桜なんかにカイルが独占されてるのも、負けず嫌いのリオンは眉を盛大に歪めた。

「リオンさんも子どもっぽいよ?」

挑発的に笑ってもうしょうがないんだからー、と首に腕を回してはにかむカイルに、至極満足な笑みで唇を重ね合わ


「―そうだ…昼はお花見行こうね!オレおにぎり作るからさっ」

―せたかった。

「………お前にはロマンがない」

何て奴なんだ、一番大事な時にムードをぶち壊してくれるアホめ。
普通はキス優先するだろうが。

「え、何が?どうかしたの?」
「…いや、もういい。さっさと出かける準備しろ」
「!…待ってて今おにぎり作るから!」

慌ただしく離れてキッチンへと行こうとするのを、リオンは寸前で引き止め指を絡ませて不敵に微笑んだ。

「良い並木道を見つけたからそこに行くぞ」


たまにはのんびり散歩するのも、気楽で良い。





――――――――――――――

リオン、最後じじ化してるような…(苦笑)
ほのぼのさせ過ぎたか…?
しっかし…、春ネタって桜と花見以外何あるんだろう……
春って何か難しい(-ω`-)




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