暑いような寒いような。
真夏の熱帯夜のせいでとか、布団をかけすぎたからなどといった単純なものではなく、カイルの体にぶわりと冷たい汗が浮かんだ。

……こわい

それしか紡げない寝起きの頭の中にはぐるぐる渦巻いて、一向に消え去ってくれない映像が鮮明に駆け巡り、あっ、と隣を見た。

「……リオン…さん?」

シーツが僅かにくしゃくしゃになっているそこは、いたという確かな証はあっても主がいなければ本当は始めからいなかったんじゃないか…そんな考えが頭によぎって、布団を無意味に握り締めた。

――変な、怖い夢を見た。
誰だか分からない人達に、ギラギラ光る劍や銃で囲まれたリオンさんが…―

「、リオン…さ…」
「珍しいな」

お前が1人で起きるなんて少しは成長したんじゃないのか?…と、言っている内容はさておき声色は普段よりも柔らかく、微かに笑った声に壊れかけたロボットのように、ゆるゆると振り向けばマグカップを片手に立っているリオンがいる。

「……ホンモノ…だよね?」

次こそリオンは様子がおかしいと気づき片眉を動かして、そこら辺の適当なテーブルにマグカップを置き、カイルの顔を覗き込むようにベッドに腰掛けた。何かあったのか、と。

「……夢、見たんだ。リオンさんが……殺されちゃう夢を…」

笑われちゃうかもしれない。
たかが夢で怖がって泣きそうになるなんて、子どもみたいだって。
ひょっとしたら呆れられてしまうかも…と、最悪な夢見はカイルを震え上がらせネガティブな思考へと突き落とした。

「……そんなものただの夢だ」

溜息を吐かれビクリとした身体を、ぐいっと引き寄せられリオンの静かに刻む心音と、暖かい腕で小さく震えるカイルを包みこんだ。

不思議と、力が抜けてくる。

「僕は簡単に殺されない。ましてやお前のそんな姿を見たら、おとなしく死ねる訳もない…」

だから落ち着け…。耳元で赤子をあやすかのように囁く優しい声に、カイルもだんだんと心が落ち着いていくのが分かった。
…それでも不安の余韻の残る身体は、リオンに預けた。

細く見えて意外に頑丈で自身よりもしっかりとした胸の中で、カイルはまた瞼を閉じた。




――――――――――
悪夢ネタ。
普段はツンデレ発揮で甘いもの大好きな子どもっぽさの残るリオンも、弱ってるカイルには大人の対応するんじゃないかなぁ〜っていう枢桐の願望。
しかし強烈な仮面臭がっ…




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