「――あれ?リオン、カイルはどうしたんだ?」

灰色に染まった水で汚れた床と部屋中を散々掃除し終えた頃に、スタンとルーティが帰って来て一言がこれだった。

いつもならソファーや床で積み木遊びや何かをして遊び、帰って来た自分達を元気よく「おかえりなさい!」と言ってくれるカイルが、どうしていないのかと聞けばリオンの顔が徐々に青ざめてハッとする。

「……まさか…―カイル!」

カイルのぐじゃぐじゃの泣き顔が頭を巡り、玄関のドアを乱暴に開け走り出したリオンを、2人も追いかけた。





木と木がさざめき、あたりは不気味な闇が支配し立つ事も出来ず、体育座りで身を縮こまらせたカイルの視線の先には一匹のウルフが、瞳を光らせ舌なめずりをしている…そんな危機的状況だった。

「ふっ…ぅう…っ、ぁ…」

怖い 怖い

いつもはスタンやリオンに守られて森を遊んでいたカイルに、当然モンスターと戦えるような力もなく、近くに落ちていた木の棒で形だけの防御をしても、そんなものは意味をなさずモンスターはまるでこの状況を楽しんでいるように、ゆっくりとゆっくりと歩み始めた。

……しんじゃうのかな?
まだリオンにごめんなさいしてないのに………


カイルはぎゅっと目を瞑った。





 


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