涙を零し嗚咽をどうにか抑えようと小さな身体が震えて、ようやくリオンはカイルを抱きしめた。 あの船でもこんな風に泣いていた。 何にも混じり気のない純粋な涙に守ると決めた誓い。 この先絶対悲しい思いなどさせないと誓ったこの己の意志が、脆弱過ぎて歯痒くなった。 「僕の為?…なら避けるな」 「……そん、なの…む、りだよ!…リオっ、さんと…マリアン、さんのじゃまっ…できない!」 とうとう泣き崩れ腕の裾をこれでもかという程掴んだカイルを、リオンもまた強く胸の中へ包み込んだ。 「邪魔なんて思った事ない。どうしてそう思ったんだ?落ち着いてからでいい…言ってみろ」 震える背中を優しく撫で呼吸を整えさせ暫(しばら)くが経ってから、泣き崩れた荒い呼吸を落ち着かせたカイルはもう大丈夫だと言い、瞳から零れる涙を拭い真っ直ぐと顔を合わせた。 「…ごめんね、リオンさん……また困らせちゃって…」 「謝らなくていい……理由が知りたい。何故僕を避け、パートナーを辞めようとしたのか」 謝罪なんて聞きたくもないし聞くつもりない。 いいから言えと拒否権は認めないリオンの眼光に、カイルは肩を強ばらせておもむろに口を開いた。 「リオンさんの……恋を邪魔したくなかったから…」 「――は?」 「マリアンさんといる時リオンさん嬉しそうだから…オレはいちゃダメだって思ったんだ」 「おい、待て」 「それにリオンさんは…弱音なんか吐かないのにマリアンさんには―」 「いいから待て!」 夢中になると周りが見えなくなるのは、本当にこいつの長所でもあり短所だなと、溜息を吐いて額を押さえた。 「…何か勘違いしてないか?……僕はマリアンに恋愛感情なんてないぞ」 ――え? 瞳が瞬きを数回繰り返し出てきた言葉はこれのみで、次に出たのは彼への追及だった。 「だってリオンさん…マリアンさんに甘えるじゃん」 「お前…僕をどう見てるんだ。いつマリアンに甘えた?」 「えっ…や、いつも笑ってるし……オレにはあんまり笑わないのにさ」 ん?と不思議に思う。 さっきからカイルはマリアンと僕の事ばかりだなと。 どういう訳でカイルがこんな事を言っているのか知らないが、これはもしかしたらと期待が膨らんだ。 ← → |