お題153/静雄さんと臨也さん
勢い良く体を後ろに倒す。全身の力を抜いた肉塊なんて、地球との間に働く万有引力と、地球自転による遠心力の合力には逆らえない。
あっという間に地面に叩き付けられ、背中への衝撃に一瞬息ができなくなる。人工的なものでは無い青が目の前に広がるも、すぐにその視界に無機物が写りこんだ。
あーあ、邪魔。台無し。
向こうでそれは酷い音を立て、起き上がり視界を向けると見事にベンチが壁へと突き刺さっている。あれに比べれば背中の痛みなんて僅かなものだろう。
視界を戻すとサングラスをしまう相手がいた。最初から付けなきゃいいのに。
「避けるなっていったよなぁ…あ?」
「やだなぁシズちゃん。
当たったら俺死んじゃうよ?」
「本望だ。死ね。潰れて死ね」
「俺まだ死にたくないな。死後なんて無いんだって。何にも無い。終わりなんだよ。
天国も地獄もただの人間の自己防衛から生まれたものにすぎない。そんな終わりをまだ23年しか生きてない俺に与えようとするのは酷いなぁ。神様や閻魔が居ると思わないけれど、悪魔みたいなのは目の前に居た…あっ、ぶねぇ!自販機二つも投げる奴がいるかよ!馬鹿じゃねぇの死ぬかと思った」
「煩ぇ!黙ってろ!手前が避けなきゃいいだけの話だろうが!」
「死ねって事?死ねって事だよね。
シズちゃんさぁ…死とかについて考えた事ないでしょ。だから簡単に人を殺そうとできるんだよね…って、」
3つ目になる自販機を持ち上げた相手に言葉を止める。どう逃げようかな。
大体自販機置きすぎだろここ。サイモンもそんな来ないだろうし。あいつ俺の事嫌ってるみたいだしなぁ。あーあ。これだから
相手が大きく投げつけて来たそれを避け、裏路地へと飛び込んだ時、あいつが何か叫んだが聞こえない事にした。
死と直面しない奴は気楽でいいよな!