お題023
「また君かぁ。しつこいよね」
右手の補助レールが派手に音を立て歪んだのを見た。自然現象で無い事は一目瞭然、補助レールが歪んだ事が問題で無く、それが人間の肉体の筋肉組織が恒常的に持っている筈の連なるDNAの動作情報内容で行われた事が驚愕の対象だろう。その驚愕本人に毎回と云うほど見付かるのだから溜息混じりに呆れたような言葉を吐いても仕方無い事だ。此方が相手を揶揄する意外に遭遇するのは都合の悪い事でしか無いからさ。
「しつけぇのは手前だろうが臨也!毎度毎度来やがって…!」
「うんうん悪かったね。じゃあ俺は用事も済んだから君に構わず帰ることにするよ。さよならシズちゃん」
面倒で簡単に応対し、如何にも戦闘意欲が無い事を見せるように手内の刃物を混擬土に捨てた。勿論相手に対して唯一の自己防衛を手放したりはしない。ナイフなら沢山忍ばせている。相手も知っているだろう。どちらにせよ態度に更に怒鳴り声を上げる筈。さぁて、どうやって逃げようかなぁ。
………?
混擬土の塊でも投げてくるかと思ったが、一向に相手は微動だにしなかった。標識を片手に唯此方を見ているだけ。不快感に近い見覚えの無い違和感に首を傾げた。
「どうかしたのか。突然大人しくなってさ。静かに過ごそうとでも人生論でも変えるつもりか、アイドリングストップのつもりかなwwww」
「………止めろ」
「止めろ?喋るなって事かな」
「…」
「あのさぁ、君は相変わらず言葉が少ないよね。それで俺に要求しても俺は分からないよ。だから君は」
「煩ぇ黙れ何でもねぇ。さっさとサヨナラして帰るか死ね」
−−−−あ
足元に所有位置を定着させたナイフを拾い上げ、此方に背を向け歩き始めた相手に向かって投げ付ける。刃先では無く柄の部分が相手の後頭部に衝突した。途端に振り向いた奴の苦情と暴力を喰らう前に先程の言葉を改めた。
「またね、シズちゃん」