監禁してしまえば良いのかしら。閉じ込めて邪魔な者から解離していらない物を追い出して。元々人は一人なのに。自分の部屋には人は入れない。窓から世界を見るだけ。人と人は壁二枚隔てて会話し存在を置いている。なのに、人では無いそれは簡単に彼の部屋に入ってしまった。彼にはアレしか見えなかった。だから愛してしまった。だから私はソレを追い出すためにあの女を部屋の中に作った。アレは今では別の部屋。少なくとも彼とコレの間に壁を造らせる事に私は成功したのよ。成功したつもりだった。分かってる。でもそうするしか無かった。少なくとも彼の部屋にこの存在を取り上げたのだから。でも結局は変わらない。彼があの女を見るようになっても、彼はあの女では無くてクビを愛し続けていたのだから。クビであるあの女も邪魔になってしまった。あぁ憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い私の部屋には誠二しか居ないのに。私には誠二が居るのに。何故誠二は私じゃ無くてクビを愛するの。姉弟だから?関係無い。関係無いのよそんな事憎い憎い。いっその事。誠二を閉じ込めてしまえば良かったのかしら。私しか見えなくなれば誠二は私を必要としてくれるかしら。愛してくれるかしら。そうよ。それなら上首尾に終わったじゃない。最初からそうすれば良かった。あぁ、あの女は殺さなきゃ。不法侵入なんてされたら堪らないわ。鎖骨から上を噛みちぎって、潰して潰して、あぁ…この血はあの女の血。クビなんてもういらない。誠二と私二人だけ。表にでなければ愛し合っても良いでしょう。だからあの女は殺さないと。




「波江、声に出てる」

「無意識だったわ。不快に感じたのなら謝るけれど」

「いーや。改めて君の愛を実感したよ。ここまで弟を愛す人間なんて俺が知る中じゃあ君が一番かな。自分には理解できない事を他人はしてくれるから嬉しいよ」

「ありがとう。嬉しくないわ」

「君は本当面白いよ。ははっ、本当君は弟が好きだよね。君に存在理由を聞いたら間違い無く弟の為って言うんだろうね。君は弟を愛してるから」

「…何が言いたいの」

「別に。俺はただ、誠二君が死んだら君は今のように居られるのかなってさ」

「…そんなの絶対に死なせないわよ」

「どうかなぁ?前にシズちゃんにボールペン一本で正面から向かったみたいだしね。
あの子の為にさ。優しい弟君だよ。大怪我どころじゃすまないだろう事をしたんだからさ」


「…。取りあえず、貴方はどうなのかしら」

「人間が居なくなったらって事かな」

「いいえ。貴方がやたら馬頭する彼が死んだらどうなのかしら。正直不本意にも弟の邪魔をした彼は死んで欲しいけれど」

「奇遇だね。俺も死んで欲しいと思うよ。俺は一刻も早く死んでもらいたいと思ってる。彼があんな暴力や有り得る事の無い身体さえなければとっくに殺してるさ。まぁ、だったら興味なんて湧かなかっただろうけれど。そんな俺にそんな愚問をして来た君の意図が分からないな。仕事もし易くなる。俺はあいつが死んだら今より充実した生活を送れるよ」

「貴方はそうでも、相手はどうかしらね」
「…どういう意味だ」

「首」

私が最も嫌いな単語を吐いて気に障る雇い主の首元を指してやると、心当たりでもあったのだろう。すぐに手で覆い隠した。良い気味。少しはこいつにも恥じらいなんてあったのね。

「良い御身分ね。物として扱われてるわよ、貴方」

あぁ、そうか。誠二は首だけを愛しているからキス以上の事はしないと思ったけれど。そう、そんな事もできるじゃない。あの女…あぁもう憎い憎い憎い憎い憎い憎いやっぱり殺しておくべきだった。私だって、誠二に付けてもらいたいのに。嫌な事に気付いてしまった私は、あの野郎と悪態を吐く人間を後ろ手にして部屋へと戻った。











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テーマ「人外ファンタジー」
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