好きな人を見ると胸が痛くなる。なんて言うけれどさ。本当にそうなのだろうか。分からない。慣用句で胸が痛むと言うのは悲しみや悩みで辛く思う事だ。どうして人を愛して痛覚が必要になるんだろう。



「波江は弟君を見ていて胸が痛くなる事はあるかい」

「貴方好きな人居ないの?」


俺にだって好きな人は居るさ。好きな人。好きな人間。そう俺は人間が好きだ。愛している。大好きで堪らないなぁ。


「けれど痛くもなんとも無い」

「愛されないものね」


だからこそ愛されたいと思うけれど、たぶん愛されないからこそ愛していられるんだろうね。そうだろ。人って愛されたら駄目だろ。めでたしめでたし。そうだ、めでたしって終わりを意味しないんだよね。


「まぁ、愛されたら愛してないさ」

「そう言うものかしら」


愛し合うなんて直ぐ離れてしまう。一方通行。そう片思いが一番の愛。
相思相愛。なんて無いんだよ。結局は自分が好きなだけ。相手の愛なんて無いと思わなきゃ。


「そうしたら、愛される為に愛するしかないからさ」

「矛盾」

「矛盾とか何。何を言ってるのかな。これは絶対的な事だって」

「哲学に絶対なんて無いわ」


けれど絶対なんていくらでもあるよね。例えばそう人。生も実感しない。呼吸器官が役割を果たさない。返答も応答も無い。蟲に愛され住処にされ喰われたそれは腐食して。それは人って言える?生きてるって言えるか?違うよね。それは死体だよね。絶対的に逃げれれない死だよね!分かっただろう。言葉で形成できる意味は言葉で抑制できる。人なんてそんなものだって。人は素晴らしいものだって!物!者!モノ!人間がそんな物を愛するなら俺も愛さなければ!人しか愛してはいけないなんて法律でもなんでも無いけれどさ。人は愛し合ったらいけないなら俺も人を愛さなければ。他の人間が人間を愛しても人間を愛さなければ。だって愛してるんだからね。俺の存在意義や意味や理由や筋道はそんなものだって。境目だろうが物狂いだろうが関係ない。それが愛しいからさ。結局は解離していく物だから俺は必要とする人間を愛してる。


「我儘にも程があるわ」

「正当なんて無いさ。何を基準して何かを正しいなんて言えない」


だってそうだ。絶対的に今ここに居る時点事を正しいなんて言えないだろ。
君だってそうだよな。愛を知って、それこそあxうs、っlxjdfぐ


「…っ、いってぇ。いきなり殴りつけてくるなんて、波江さんも随分横暴になった、よな」

「愛だの絶対だの煩く一向に黙らない貴方に苛付いた私はとても優しいから、最初の質問に答えてあげる」

「っ…あ?」

「今貴方が感じているそれ。その胸の痛みは恋だと思うわ」

「…は?」

「そう。私を見て胸を痛ませると言う事は、貴方私を愛しているのよ。どうかしら。私なら貴方を愛せずに居られるけれど」

「あ、ははっ。ごめん。痛みならシズちゃんの方が上だ」

「そう。残念」










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テーマ「人外ファンタジー」
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