(赤緑/琴→銀前提)

コトネはトキワジムに設けられた仕事場として使われる隔離された空間のソファーが異様に気に入っていた。度々寄っては机に向かうグリーンの背後でソファーに身を埋めながら窓から入る光が顔に当たらないと身じろぎし落ち尽く場所を見つけ出すと、思慮も無くどう有っても良いようは話を彼へと投げ付ける。

正直邪魔をしているのかと言えばそうかもしれないが、彼女も悪気が有る訳でも無く、彼も追い立てる事もしないので変わらずその光景が頻繁に見られるのだろう。今は仰向けに寝転がるコトネが自分のポケギアを左手で視線の先に高く掲げ見ながら右手でVサインを作り画面に当てている異様な行動。写した画面はタウンマップらしく中指は今自分の居るトキワシティを、人差し指はシロガネ山を指していた。


「こんななのに」


間を固定し指を離すと今度は自分の右指を唯眺め何気無く呟いたその言葉に、グリーンは相手を見る事もペン先を止める事も無く何がだと言葉掛けるとコトネは彼に指幅の狭いVサインを向ける。


「タウンマップ上では大豆が一粒入るぐらいの距離なんですよ。シロガネ山とトキワシティ…レッドさんとグリーンさんの離れた距離。でも、実際は遠いんですよね」


言葉の中に有る単語にぴたりと動きを止め、そこで初めてコトネに顔を見せた相手は何も話す事無く此方を見るだけだ。今日初めて見たグリーンの目に先程の言葉に含めた人をコトネが思い出していると「良いんだよ、それで」と声が響いた。



「どーしてですか。私だったら寂しいですよー」

「前は居場所さえ分からなかったからな。今は何処に居るか分かるんだ。何時でも会いに行ける」

「うっ…畜生!バカップルめ!居場所なんて分かんないですよー!」


コトネが唐突に叫んで勢い良く身体を捻るとソファーに顔を埋めて足をバタつかせ始めた理由は容易く想像出来る。一方的に近い思いを抱いてる人と3ヶ月近く会って居ないと言う話は何十回も涙を浮かべる彼女に聞かされたからだろう。そんな相手にグリーンは笑った。


「何処に居たってタウンマップ上では近ぇだろ」








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