幼なじみのヒビキ君は随分と前からポケモンと一緒に居た気がする。マリルと遊ぶようになった彼を遊びに誘う事が無くなってから私は一人で何をして居たっけ。あれ、思い出せ無い。忘れた。ずっとポケモンと過ごしていた彼と違い、私が初めてその子達を手にしたのは旅に出る当日の事。随分と長い間ポケモンと関わろうとせず、ギリギリまで博士の所に行かなかったのはヒビキ君の新しい友達が腹立たしかったのだろうか。


(ポケモンなんて要らない)
(旅とかしたくない)
(このままで良かったのに)


弱音ばっかり口にした気がする。その日も朝から気分最悪で、親に言われ不本意に引取に行ったけれど研究所に中々入る覚悟が出無い。どうしようかと研究所の周りを彷徨いていたら見知らぬ子供と目が会い、しめた!と内心喜んだのは、会話を成立させて少しでも嫌な事を先延ばしにしようと決めたから。私は黙って此方を見る相手に足を向けると何しているのと声を掛けた。

途端、突き飛ばされた。

兎に角吃驚して地面に座り込んでから文句を言おうと見上げた視界先の相手は、とっても綺麗な髪をしていてね。思わず自分の髪と見比べると今度は不審な目で人の事ジロジロ見てんなって言われちゃった。この子も旅に出るのかな。何処か見た事が有る気がするのは気の所為だろう。私は何も言わずに彼から離れると、これから先のパートナーを受け取る為に足を運んだ。旅の最初の思い出がそれ。

その後暫くして彼に勝負を挑まれ相手の名前を知った。泥棒とか、関係無い。何処に惚れる要素が有ったのか分からないけれど、私は彼を好きになった。一目惚れって事ね。一番最初の友達には本当に感謝したの。貴方のお陰で彼と出会えたんだから。これからもずっと一緒よと、人一倍私はポケモンを可愛がってたと思う。そこから彼の足取りを付けるように始まった私の旅は、とても楽しかったなぁ。ストーカー?そうかもしれないね。けれど最初は目標も目的も無く私に取って家を出る事は酷く絶望的な事だから、旅をする理由が出来たのは歓喜溢れる物だった。馬鹿みたいに彼を追い回しては『博士に頼まれて盗まれたポケモンを取り返す』なんて表向きに口実を作り上げ、行く先々で彼と戦う。結果は何時も一方的に私の負け。それで良いの。負ければ『次こそ勝ってその子を取り戻す』そう言ってまた会える。その日も私の手持ちは全滅したけれど、これでまた彼と会えると内心舞い上がる。俯いた私が笑ってると気付かれて居ないと良いな。けれど違和感。何時もなら罵倒の一つでも来る筈が、何も当てては来ない。不思議に思い見上げれば、彼は唯此方を見ているだけ。え、何。どうしたの。


「…お前、もう来るな」

「え」

「弱い癖に付きまといやがって、腹立つ。雑魚には興味無ぇんだよ」

「もし、強くなったら?」

「少しは興味を持ってやるよ」





(あぁ、強くならなきゃ)
















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テーマ「人外ファンタジー」
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