指先に当たったボールが雪の上を滑る。慌てて手を伸ばすと掴んだのは雪塊だ。おかしいな。少し先で止まったそれを今度は確実に掴むに立ち上がろうとすると立ち眩みに膝を落とした。上手く手先が動かせ無い、動機がして目の前がチカチカする。この身体の力の入らなさには危機を感じた。

何が原因だろうと巡れば、思い当たるのは最近何かを口にした覚えが無い事。なんだ、大した事無い。どうしたのかと多少焦ったけれど空腹が酷いだけの話。その場に座り込んで食料の入った袋を手に取り中を覗くが、空腹の筈なのに見るだけで胸焼けを起こすような感覚に襲われた。駄目だ何も食べたくない。

唯一手に取った珈琲に付属された角砂糖を一つ舐める。頭がすっきりしたのは一瞬。さぁどうしようか。雪でも食べようかと一掴みしたそれは、口にする前に溶けてしまい、僕は食事を諦めた。もう寝てしまおうと何もかも投げ出して雪の上に倒れこむ。冷たさを感じ無くなったのは何時から、頭の中が冷える感覚を感じるようになったのは何時からだろう。なんて考えてる内に瞼が重くなって来る。意識が無くなるのはそう遠く無さそうで、何故だか心地良い物に身を任せながら目を閉じた。


「等々死んだか馬鹿レッド」


聞き覚えの有る声が耳に付く。ザクザクと雪を踏みしめる音が真上まで届いた。どうして彼は何時も何時も僕の邪魔をしたがるんだろう。僕に軽口を叩けるのも此奴だけだ。悪気が無いのだから尚更苛々する。頭上に座り込んだのが随分と近い距離で声が響いた。頭痛い。


「死んでんじゃねーよ。半袖なんかで居やがるからそうなるんだぜ」

「…お前も死ねば良いのに」

「なら、お前と心中でもするかな」


見上げると、なんて馬鹿な会話してんだよ俺等と笑われた。自分から降っといた癖に腹立つ。何が心中だ死ぬなら一人で死んでろ。いや、本当にどうでも良い。僕は凄く眠いんだ。お前に構ってられ無い。放って置いて欲しい帰れ。


「はぁ?折角食料調達しに来たのに何だよその口はよ。…って、お前」


途端真顔で何処か怒るような目を向けられた。あぁ、まだ大分膨らんだ食料袋に気付いたみたいだ。仕方無いだろ、お前の所為で死に損ねたんだって。


「幽霊って噂を現実にする気かテメェ。幽霊なんて言葉時点で現実感も台無しだがな。なぁ、お前マジで死ぬぜ」

「…煩い。死ぬとか非現実的な事言わないで。餓鬼かよ」

「馬鹿か。これ程現実的な物他に無ぇよ餓鬼。まぁ、こんな保存食不味くて食えなくなるのも分かるけどなー…レッド」

「…なに」

「今から俺の家来い。食いたい物作ってやる。おっと、断るなよ。強制イベントな」


思わず返答出来なかったのは昔彼が作ってくれた味が美味しかったからだろうか。確か前も同じような事が会った気がする。旅に出る前はお互い遊んで飯食って。今では会う事すら数回。だけど残念。本当に何も口にしたく無「早く行こうぜ」


あぁ、断り損ねた









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