彼の性格を聞かれたら、必ず口が悪いと答えるだろう。少なくとも彼が悪態以外の言葉を口にする所なんて彼女は知らなかった。それでも相手に不快感を覚えた事が無いのは、それが彼らしさだと知って居たからこそ今までライバルとして成り立って来たんだろうと彼女は一人思う。だからだろう、彼が他の人間と会話をする事が気掛かりで仕方が無かったのは相手の言葉に怒りを覚える奴等の中で彼に手を上げる奴が出るんじゃないかと心配したら、案の定。

彼に子供が一方的に勝負を挑んだのが元の始まりなのは確かで有り、煩く喚くその子供に彼は溜息を吐いて了承したバトルは誰もが予想出来た結果で終わった。最後の手持ちが倒され涙ながら駆け寄る子供に対してバトル終了後に彼が言った言葉が気に障ったのだろう。子供はポケモンを戻そうと思って手にしていたボールを彼へ力一杯投げ付けた。それが発端。

自分のポケモンを弱いなど使えないなんて言われたから怒るのも無理は無い事は分かって居るけれど正直そんな事どうでも良く、兎角彼に傷を付けられる事は彼女に取って酷く癪に障るものだった。偶然その様子を見て居た彼女は居ても立っても居られなくなり、駆けだすとその勢いのまま地面に膝を付くその子供を蹴り飛ばした。

鈍い感触に小さく聞こえた曇った声。まだ子供?知ら無ぇよそんな事私のシルバーに何しやがるんだふざけんな死ね餓鬼。なんて内心悪態を吐きつつ蹴りを入れた軽い身体は簡単に飛び地面へと跳ね落ちる。本当はこんな事で気持ちが落ち着くわけでは無いが我慢しよう。

お前なんかより大事な事が有るからと彼女は酷く驚いたように固まる彼の元へと掛り、大丈夫?と壊れ物のように彼の顔を両手で触れる。先程固形物を打ち付けられた額は赤く広がっており、それだけでも腹が立つが元々子供の力など大した事は無く痣が出来る程では無いようなのを確信して彼女は安心して、もう大丈夫だよシルバーと目を伏せた。


「テメェ、最低だな」


彼女の耳に入ったのは何時もよりトーンの低い声。怒らせてしまったみたい。頬を包む彼女の両手を掴み落とすと彼は一度抱え込む子供を見て顔を歪ませた後、彼女を見る事もせず歩き出した。あぁ、暫く無視を決め込まれる。それでも彼女は慌てなかったのは、彼が優しいのを知っているからだ。きっと口を聞いてくれない事に泣きながら謝罪の言葉を綴れば許してくれる。

彼女は未だに地面に額を付け嗚咽を漏らしながらうずくまる子供に今有るかなり桁数の多い所持金を全て相手の目の前に投げ置いた。


「ごめんね、これはほんの謝罪とお礼
君のお陰で私と赤髪君はもっともぉーっと仲良くなれるんだから!」










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