“ルイス兄様!”と明るい声に目が覚める。
俺を呼ぶ、愛しい声。
「ルイス兄様みーっけ!」
「名無し……」
“おはよう”と言うと彼女も元気に“おはようございますっ”と返す。
俺を兄と慕う、血のつながりのない妹分。
出会いは彼女が森で魔族に襲われているのを助けたのがきっかけだった。
それから、彼女は俺を兄と慕い此処、影の国まで着いてきたという。
「で、どうしたの名無し」
ふわぁ、と欠伸をする。
まだ眠いからか、意識が覚醒しきれていない。
「兄様、今日こそ剣の稽古をつけてください!」
「やだ」
「即答!?なんでー!」
不満気な声を漏らすと、俺の腕に引っ付きながら“お願い!”と懇願してくる。
これで何度目だろうか。
何度言っても聞かない名無しの頭をぽんぽんとしてやると嬉しそうに頬を緩ませた。
「ハッ!もー子供扱いしないでよ!私立派なレディなのよ?」
「立派なレディなら剣の稽古なんて必要ないだろ?」
「う"っ……だってぇ……」
「何?」
言いにくそうに、恥ずかしそうに、口をもごもごとさせた後に出た言葉は
“少しでも貴方と一緒にいたいから”
なんて。
「ふは、可愛い奴だな」
「きゃっ!もう、髪がぐしゃぐしゃになっちゃうじゃない!」
頬を膨らまし、如何にも怒ってますよという顔をしながらも何処か嬉しそうな声色で怒る。
そんな姿に俺も笑みを零す。
どうか、この幸せな時間がずっと続きますように。