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「うっせー、邪魔。」
吐き捨てて、勝手に座ってる椅子を下から蹴り上げる。
それでもニヤニヤと楽しそうに笑っているが、こいつは決してマゾなんかじゃない。
むしろ、究極のサドだ。
嗜虐して傍観してかき回して壊して、力で痛めつけて言葉で切り付ける。それを楽しそうにながめ、凍った瞳でわらいつづける。
“お気に入り”だけにベタベタと甘えて絡みつき、他の奴等はただのおもちゃ。
使い捨ての滑稽で愚鈍な道具、としか認識していない。そいつらが呼吸をしていることさえ、配慮しているのか不明。
やめろよ、やりすぎだ。
そう言いたい場面も多いが、言わない。
逆らって機嫌を損ねたら殺される。
言わないんじゃない、言えないんだ。
そう肩を竦めるダチに、ここも弱肉強食とかいう現代社会の一部なのだと思った。
そして、俺は言わない。
言えないんじゃない、言わないんだ。
サドで性悪な王様のリクの、何故か“お気に入り”な俺。
たった1人の、お気に入りな俺。
何を言っても、何をしても、リクは怒らない。
幸せそうにへらりと笑ってまとわり付いてくる。
俺といる時だけ、心から楽しそうな笑顔を崩さない。
だからこそ、怖い。
絶対に、言わない。
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