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惹きつけられた。
彼は、整いすぎた人間だった。
日本人離れした長身とスタイル、端正な顔からはひどく冷たい印象を受けた。
異彩を放つ彼が、伏せられていた瞳を上げる。
その瞳に、ひどく惹き付けられた。
髪と揃いの漆黒は、珍しくもなんとも無い色だ。
驚いたのは、それがあまりにも落ち着いていたから。
どこか暗いものが漂う、だが強い。
なにか超越したような、明らかに違和を感じる瞳だった。
そのまま降りた彼は、長い脚ですたすたと去ってしまった。
当たり前、所詮は他人だ。
だけど俺には、衝撃だったんだ。
たったの一瞬が、やけに鮮明なスローモーションで。
ほんのわずかな間だったのに、忘れられなくて。
視線が絡み合った一瞬は、音が消えた。
俺はガキじゃない。
そりゃ高校生なんて大人でもないけど。
だから、なんとなくだけどすぐに分かった。
俺は彼に惹きつけられたんだ。
俗に言ってしまえば、一目惚れってやつ。
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