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偶然なんかじゃない。
きっとそう、必然だったんだ。
同じような毎日の繰り返し、気が狂いそうな無限リピート。
慣れすぎちゃって、刺激なんてどこにもない。
見慣れた自分の部屋、アパート、駅、ホーム。
周りに立つ人にすら感じる既視感。
通勤通学組に囲まれた俺だって、立派に馴染んで大衆の一人なわけで。
吐き気すら感じるほどに、慣れきって弛みきった日常。
きっと今日も、学校で仲間とバカやって喧嘩して、先生に叱られるんだろう。
毎日はしゃいで騒ぎまくるのに、それでもともなうけだるさ。
なんだか、心がじわじわと死んでいってるような気分だ。
はぁ、と重い息を吐いて顔を上げる。
それでも俺は生きてる、今まさに生きられる。
考えたって仕方がない、平和って素晴らしいことだろ、安寧って尊いことなんだろ。
変に沈み込んだって損なだけだ。
気分を変えろ、笑え、笑うんだ。
無理矢理に自分をポジティブに持っていきながら、ふと思った。
髪の色でも変えようかな。
夏らしい、思いっきり明るい色に。
がしゃん、という音に我に返る。
横にスライドしていく灰色のドア。
そこで、俺らは出逢った。
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