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今の考えの間も、機械的に学校へと動き続けていた足が止まる。
突然立ち止まった俺を訝しげに見る人込みの中、俺は迷うことなく身体を反転させた。
どうせあの両親だ。
俺がしたいように行動したところで、責められることはないだろう。
どうにかして、赤の他人の彼に再び会うには。
同じ場所でずっと、彼の帰りを待てばいい。
平日の駅のホームで一人、学生がベンチに悠々と腰掛けている。
かなり異様な光景だろうことは、こちらを伺うように見てくる幾多の視線から分かる。
だが、その中にも俺の心を惹く輝きは無かった。
特にすることも無く、ひたすら暇で待ち遠しい。
退屈に飲まれそうな頭に、ふと思い浮かぶのは彼の姿。
制服を着ていた彼にまた会うには、少なくとも夕方まで待たなければならないだろうか。
もしかしたら来ないかもしれない、ラッシュに紛れ見つけられないかもしれない。
再会は困難の極み。
稚拙なこの方法が、どれほど馬鹿げているかも知っている。
それでも、ほんのわずかの可能性に賭けずにはいられなかった。
何もしないで今までの生活を繰り返すことなど、到底無理な話だった。
会いたい、何故かこんなにも強く思う。
焦がれて、想う。
これは、なんだか、話に聞くところの恋に似ている。
人生で初めての激情は、どこか心地よく俺の胸を焼く。
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