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世界はモノクロだった。
美しいものもなく、生きているものもなく、ただ全てが無機質に流れていく日常。
味気無く、彩もなく、刺激などあるはずもない。
だから俺は、モノクロだ。
クールだ冷静だなんだと言われるが、全く違う。
この世界に、何を感じろと言うんだ。
鮮やかな色にあふれたモノクロの世界。
そこに在る俺もまた、かすれたモノクロだった。
一定のリズムを刻む電車、いつもと同じ朝。
周りにひしめく他人にも興味はわかない。
さらに言わせて貰えば、これから行く学校にも、人生にも、娯楽にも、魅力など感じることが出来ない。
つまらなく、廃れた、無意味なものとしか思えない。
俺はとんでもない欠陥品だと、常々そう思う。
聞き取りづらい不明瞭なアナウンスが、俺の降りる駅を知らせる。
・・・考えても仕方が無い。
どうしても世界はモノクロだ。
そしてそれは、悲しいことでも嬉しいことでもない。
ただの事実。
鞄を掛け直した俺の前で灰色の扉が開く。
眼前にまた、モノクロが広がる。
そこで、俺は出会った。
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