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「・・・完璧、恋する乙女じゃん。」

ぽつりと呟いたクラスメイトに、先ほどとは豹変した王様が視線を向けた。

「殺すぞ。」

鋭く、恐ろしく、どこまでも冷たい眼差しと雰囲気。
美しく整った顔も、その酷薄さと威圧感に拍車をかけるだけだ。
笑顔など嘲笑と冷笑しか浮かべない。

これこそが本来の王様、暴力的で冷徹なボス。
先までの面影などゆるやかに笑っていた姿は微塵も無く、周囲は現実と真実を思い知らされる。


慌てて床を見る男からは、王はすぐに興味を失った。
“お気に入り”の彼以外の奴等には、執着も愛情も同情も興味も無い。

窓から眺めていると、覚束ない足取りの愛おしい人が歩いていくのが見えた。

思わず頬が緩み、そして咄嗟に2人を遮る窓ガラスを殴りつける。

「コウちゃんは、俺のだもんね?」

禍々しいまでに無邪気な笑顔で、リクはその背を見つめ続けた。
ひび割れた窓ガラスをどす黒い血が伝って落ちた。



「あ、」

思わず声を上げて立ち止まってしまった。
周りを歩いていた人がチラリと怪訝そうに見ながら通り過ぎていく。

だけどそんなこと、パニック状態の俺にはどうでもいい。

「ど、どうして…?」

ありえない偶然だ、今まさに俺に奇跡が起こっている。
急激過ぎることの展開に、思わず息をのんだ。


見つめる先、ホームのベンチに腰掛けているのは、間違いなく今朝のあの人だ。

これは奇跡だ。
またとない再会、そして接触のチャンスだ。

・・・男なら、チャンスは逃すな!


見たことも無ければ、今まで信じたこともなかった神様に感謝する。
震える自分の足と心を叱咤し、勇気付ける。

そして、異常な動悸がする胸を押さえつつ、彼へと駆け出した。


Shout!
(叫べ!
  拙い想いよ、どうか彼に!)




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