06


目が覚める。
鳥のさえずり、あたたかな日差し。真っ白いシーツの上で、光がきらきらと風に舞う。
美しいと、素直にそう思った。

…死んで、ないのか。
手首を見つめると、きれいに包帯が巻いてあった。なぞるとどこか、痛い、気がする。
外して、みようかな。
手首がどうなっているのか、ただの好奇心で包帯に手をかけた。

「…何をっ、している!?」

包帯を手に手首の傷あとを見つめていたところで、荒々しい手つきで包帯を奪い取られた。
目をやった先にある、余裕のない感情があらわな瞳に時がとまる。
俺の知る冷たいジルオード様とは、かけはなれた人間らしい姿。

言葉もなく見つめていると、ジルオード様は溜息をひとつついて力なくベッドに腰掛けた。

「首を絞めて、また死のうとするのかと思った。」

まるで俺の身を案じているような言葉に、困惑する。どうして彼がこんなことをするのか、頭がぐるぐるとまわる。分からない。

「そんな顔をするな。俺も分からない。ただ、また生まれ変わり巡りあう魂のことよりも、お前と別れるのがつらいと思った。」

今までを考えれば、饒舌な姿もその言葉も信じがたく、ますます思考はまとまらない。ただ、まとまらない思考の中で、ふと思い出したことを口に出した。

「俺を、呼んだ?」

沈黙。ああ、そうか。つまり、そういうことだ。
肩から力が抜ける。何もかもが、どうでもよくなった気がした。今まで感じていた窮屈さもさみしさも恐怖も、なにもかもが消えていく。


「…式は、いつがいい」

小さく首を傾げれば、視線の先で彫刻のようだったはずの顔が少し緩んだ。

「やり直しだ。おまえと俺の」


前世も来世も、魂も運命も関係なく。
ただ、おまえと俺で。
愛を、やり直そう。



ゆるりと笑えば、窓からのそよ風に視界の端で花瓶の花が優しく揺れた。


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