03
全てを失った日、そして王宮に召された日。
与えられた一室で、私は静かに窓から夜を見ていた。
何も考えず、ただひたすらに。

―――憎いか。

それは不意に私の耳に届き、意識をそれに持って行かれた。

―――おまえは魔物が憎いか。

誰もいない、一人きりの部屋。そこでどこからともなく響く声。
だが多くのことがありすぎて、どこか麻痺していた私は自然とその声に答えていた。

「憎くは、ないかなあ。寂しい……のかな。……うん。多分、そう。」

言葉にしながら、ようやく自分は寂しいのだと思った。

―――さみしい、のか。
「失ったからかもしれないし、この世に生を受けてからずっとかもしれない。」

ただ、寂しくてたまらないのだ、と。
すらすらと出る言葉は他人のもののようで、そしてずっと自分が抱えてきた秘密だった。
私は心に空虚を飼っている。

―――それならば、俺が傍にいてやろう。
「本当に?」
―――ああ、約束する。

声だけの存在。常軌を逸している。
だが私は、その言葉が本当に嬉しくて、心が凪いでいったのだ。

声は今でも、夜ひとりになると、ふと話しかけてくれる。
私の全てを知る不思議な声。それは、弱い己の作り出した幻であるのかもしれない。
それでも事実、その声に救われて生きる自分がいる。


prev next

bkm
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -