02
もともとの私は、貴族の端くれであった。
しかし先の戦で親族も土地も財産も、何もかもを失った。
だからこそ私は王宮に召し上げられ、神子さまのお世話係となれた。
何もない私は、迷わず我が身を盾と出来るからだ。


神子さまはご就寝。
警護のおふたりに頭を下げ、私は自室へと下がる。
日中はお側を離れない私にも休息は必要であるのだ。

自室の前には、険しいお顔の王様の側近さま。
無言で頭を下げれば、付いてこいとだけ言われ、そのまま王様の執務室へと入ることとなった。



「……伝えるなよ。」

浮かない顔の王様を残し、側近さまと退室する。足取りは重い。
同じ歩調の隣と目を合わせ、うなづきながら、心が沈んでゆくのが分かる。

ご結婚。
どんなに愛らしくとも、神子さまは男性だ。子は成せない。
国を背負う王には世継ぎが必要だ。
だからこれは、仕方がないことなのだ。
とても、残酷なことだけれど。


―――浮かない顔だな。
「……そう?」
―――他人事だろうに。

聞きなれた低く深い声が言う。そこに冷たさはなく、ただ不思議そうで笑えた。
「それでも悲しいもの。愛があってもどうにもならない。」
―――愛は全てを超えられぬ、と。

「……よく分からない。でも悲しいね。」

そうか、とだけ呟いた声だけの彼は、そのまま何も言わなかった。
私もただ周りに広がる夜闇を見て、どうしようもない心を持て余していた。


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